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	<title>Postsecondary Analytics, LLC</title>
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	<description>Research, planning, benchmarking, data visualization, facilitation and coaching for higher education.</description>
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		<title>アメリカ大学事情　Vol.５　２０１３年５月７日　日本の大学進学率が低いことは問題か？</title>
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		<pubDate>Wed, 08 May 2013 04:08:33 +0000</pubDate>
		<dc:creator>Takeshi Yanagiura</dc:creator>
				<category><![CDATA[アメリカ大学事情]]></category>

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		<description><![CDATA[先日、下村文部科学大臣がワシントンDCで講演した際、東大などが秋入学へ移行を検討していることから生じる高校卒業からの空白期間、いわゆるギャップターム、を利用して海外に行く学生には奨学金を給付するという構想を発表した。給付金の奨学金といい（先週の記事参照）、現政権下ではとにかく奨学金の拡充をしていこうという動きが目立っている。ただギャップタームの奨学金も、アイデアとしては面白いが、財源の確保等、実行に移すまでには超えなければならない壁が多そうである。 ところで、せっかくなのでＤＣ近郊に住む私もその講演に聴衆として参加した。個人的に興味を引いたのはギャップタームの奨学金拡充政策よりも、大臣が各国の大学進学率に言及している時であった。下村大臣は、日本の大学進学率は５１％であると紹介し、先進国の中ではかなり低く、日本の大学進学率を上げて行かなければならない一方で、定員割れの大学が４０％を数え、日本は一つのジレンマを抱えているということを述べていた。 このデータを耳にした時、何か腑に落ちないものがあった。確かに、ＯＥＣＤが毎年発表する国際教育白書とも言えるEducation at a Glanceによれば（おそらく下村大臣はここからデータを引用されていたと予想される）、OECDの平均は６２％であり、日本の大学進学率よりも１１％ポイント高い。一番高いのはオーストラリアの９６％であり、アメリカの大学進学率は７４％である。またアジアに目を向ければ、隣の韓国では７１％である。（表１） 表１：高等教育進学率比較（タイプA機関）２０１０年 出所：OECD Education at a Glance 2012. Table C3.1. Entry Rates into Tertiary Education and Age Distribution of New Entrants (2010) より作成 しかし、一方で日本の２５－３４歳人口における学位保持者（２年以上の学位）の割合は、５７％であり、韓国についで世界第２位であり、ＯＥＣＤ平均の３８％を大きく上回る。大学進学率が低いのになぜこのようなことが可能なのか？ 表２：２５－３４歳人口に占める学位保持者（２年以上）の割合　２０１０年 出所：OECD Education at a Glance 2012. Table A1.3a. Population that has attained tertiary education (2010) より作成 結論から言うと、「大学」進学率としてではなく、「高等教育」全体の進学率で比較すると、日本の進学率は世界的に決して低くはない。少なくとも、アメリカと比較しても低くはないし、実はオーストラリアと比較しても、一般的に信じられているほどの差はない。 ＯＥＣＤは高等教育機関を２つのタイプAとBにわけ、学士号を授与する大学をタイプA、それ以外の機関、短大や職業訓練を目的とした専修学校を高等教育タイプBに分類している。 ＯＥＣＤによれば、日本の５１％は、タイプAの進学率を指し、４年制大学への進学率を意味する。ちなみにタイプB（大学以外の高等教育機関）の日本の進学率は２７％である。一方、アメリカの「進学率」はタイプAとタイプBを分けてはいない。タイプAの中にタイプBも含めて、それを進学率とし、７４％としている。アメリカの場合は、４年制大学であってもその中に准学士を授与する大学もあるので、ＯＥＣＤが要求しているようにタイプAとBにはっきりと立て分けることができないことがその理由だと考えられる。 日米の大学進学率が同じ土俵で比較されていないことはここから明らかである。日本のタイプAとタイプBを合計した高等教育進学率は７８％（５１％＋２７％）であり、アメリカの７４％を上回ることになる。 日本： 高等教育機関タイプA（大学）への進学率　５１％ 高等教育機関タイプB（それ以外）への進学率　２７％ 高等教育AおよびBへの進学率　７８％（推定） アメリカ： [...]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p><span style="font-size: small;">先日、下村文部科学大臣がワシントンDCで講演した際、東大などが秋入学へ移行を検討していることから生じる高校卒業からの空白期間、いわゆるギャップターム、を利用して海外に行く学生には奨学金を給付するという構想を発表した。給付金の奨学金といい（<a href="http://www.postsecondaryanalytics.com/us_highed_blog004/">先週の記事</a>参照）、現政権下ではとにかく奨学金の拡充をしていこうという動きが目立っている。ただギャップタームの奨学金も、アイデアとしては面白いが、財源の確保等、実行に移すまでには超えなければならない壁が多そうである。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ところで、せっかくなのでＤＣ近郊に住む私もその講演に聴衆として参加した。個人的に興味を引いたのはギャップタームの奨学金拡充政策よりも、大臣が各国の大学進学率に言及している時であった。下村大臣は、日本の大学進学率は５１％であると紹介し、先進国の中ではかなり低く、日本の大学進学率を上げて行かなければならない一方で、定員割れの大学が４０％を数え、日本は一つのジレンマを抱えているということを述べていた。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">このデータを耳にした時、何か腑に落ちないものがあった。確かに、ＯＥＣＤが毎年発表する国際教育白書とも言えるEducation at a Glanceによれば（おそらく下村大臣はここからデータを引用されていたと予想される）、OECDの平均は６２％であり、日本の大学進学率よりも１１％ポイント高い。一番高いのはオーストラリアの９６％であり、アメリカの大学進学率は７４％である。またアジアに目を向ければ、隣の韓国では７１％である。（表１）</span></p>
<p style="text-align: center;"><span style="font-size: small;">表１：高等教育進学率比較（タイプA機関）２０１０年</span></p>
<p><a href="http://www.postsecondaryanalytics.com/wp-content/uploads/2013/05/OECD-College-Going-Rate-2010.jpg"><img class="aligncenter size-medium wp-image-2589" alt="OECD College Going Rate 2010" src="http://www.postsecondaryanalytics.com/wp-content/uploads/2013/05/OECD-College-Going-Rate-2010-300x217.jpg" width="360" height="260" /></a></p>
<p><span style="font-size: small;">出所：OECD Education at a Glance 2012. Table C3.1. Entry Rates into Tertiary Education and Age Distribution of New Entrants (2010) より作成</span></p>
<p><span style="font-size: small;">しかし、一方で日本の２５－３４歳人口における学位保持者（２年以上の学位）の割合は、５７％であり、韓国についで世界第２位であり、ＯＥＣＤ平均の３８％を大きく上回る。大学進学率が低いのになぜこのようなことが可能なのか？</span></p>
<p style="text-align: center;"><span style="font-size: small;"><br />
表２：２５－３４歳人口に占める学位保持者（２年以上）の割合　２０１０年</span></p>
<p><a href="http://www.postsecondaryanalytics.com/wp-content/uploads/2013/05/OECD-EdAttain-Rate-2010.jpg"><img class="aligncenter size-medium wp-image-2580" alt="OECD EdAttain Rate 2010" src="http://www.postsecondaryanalytics.com/wp-content/uploads/2013/05/OECD-EdAttain-Rate-2010-300x217.jpg" width="360" height="260" /></a></p>
<p><span style="font-size: small;">出所：OECD Education at a Glance 2012. Table A1.3a. Population that has attained tertiary education (2010) より作成</span></p>
<p><span style="font-size: small;">結論から言うと、「大学」進学率としてではなく、「高等教育」全体の進学率で比較すると、日本の進学率は世界的に決して低くはない。少なくとも、アメリカと比較しても低くはないし、実はオーストラリアと比較しても、一般的に信じられているほどの差はない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ＯＥＣＤは高等教育機関を２つのタイプAとBにわけ、学士号を授与する大学をタイプA、それ以外の機関、短大や職業訓練を目的とした専修学校を高等教育タイプBに分類している。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ＯＥＣＤによれば、日本の５１％は、タイプAの進学率を指し、４年制大学への進学率を意味する。ちなみにタイプB（大学以外の高等教育機関）の日本の進学率は２７％である。一方、アメリカの「進学率」はタイプAとタイプBを分けてはいない。タイプAの中にタイプBも含めて、それを進学率とし、７４％としている。アメリカの場合は、４年制大学であってもその中に准学士を授与する大学もあるので、ＯＥＣＤが要求しているようにタイプAとBにはっきりと立て分けることができないことがその理由だと考えられる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">日米の大学進学率が同じ土俵で比較されていないことはここから明らかである。日本のタイプAとタイプBを合計した高等教育進学率は７８％（５１％＋２７％）であり、アメリカの７４％を上回ることになる。</span></p>
<p><span style="text-decoration: underline;">日本：</span><br />
<span style="font-size: small;">高等教育機関タイプA（大学）への進学率　５１％</span><br />
<span style="font-size: small;">高等教育機関タイプB（それ以外）への進学率　２７％</span><br />
<span style="font-size: small;">高等教育AおよびBへの進学率　７８％（推定）</span></p>
<p><span style="font-size: small;"><span style="text-decoration: underline;">アメリカ：</span></span><br />
<span style="font-size: small;">高等教育機関タイプA（大学）への進学率　７４％　（タイプBの進学率も含む）</span><br />
<span style="font-size: small;">高等教育機関タイプB（それ以外）への進学率　空欄</span><br />
<span style="font-size: small;">高等教育機関タイプAおよびBへの進学率　７４％</span></p>
<p><span style="font-size: small;">もっともＯＥＣＤは、単純にタイプAとタイプBの進学率を足すことはできないと警告している。タイプA及びタイプBの両方の機関に同時に集計されている学生も大勢存在する可能性があるからである。しかし、その警告は日本にはおそらく当てはまらない。これは自分の推測にしか過ぎないが、日本においては、専門学校から大学へ進学する学生数は少数であるだろうし、また短大から大学に編入する場合は１年生としてではなく、大体が３年生からである（従ってＯＥＣＤの新入生としてはカウントされない（１））。そして４年制大学への編入自体も日本では活発には行われていない。以上のことから考えると、日本の高等教育全体への進学率は７８％か、もしくはそれを若干下回るレベルにあると推測される。つまり日本では若者の大体１０人中８人が高等教育に参加しているということである。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">次に、オーストラリアに関して、オーストラリアのタイプA機関への進学率は９６％で、世界一である。しかし、オーストラリアは全体の学生に占める留学生の比率が２１．８％にのぼるため（２）、オーストラリアの大学進学率は必ずしもオーストラリア出身の学生の進学率を示しているわけではない。ＯＥＣＤは留学生数を除外した進学率も発表しているが、その場合オーストラリアのその値は６７％にまで下がる（３）。さらに２５歳までの進学率は５１％にまで下がり（４）、ほぼ日本と同じレベルになる（５）。一方、オーストラリアのタイプBの進学率はＯＥＣＤには報告されていないため、高等教育全体の進学率を予測することは不可能だが、日本の７８％はおそらくオーストラリアの高等教育進学率と比較しても低すぎる値とは思えない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">もっとも、日本の大学への進学率（高等教育進学率ではなく）が世界でトップレベルではないことは事実である。それでは、日本は大学に通う学生をもっと増やしていくべきなのであろうか？</span></p>
<p><span style="font-size: small;">当然大学進学率が高ければそれに越したことはない。しかし、国によって労働市場の需要は異なり、どのようなスキルを持った労働者が要求されているのかは、特に短期的には、多少異なってくる。国によっては大学卒業者が最も必要とされている場合もあれば、専門学校で職業訓練を受けた人材の輩出が急務の国もある。中央政府の役割とは、その国の労働市場の人材需要を理解し、それに適した高等教育システムを構築することである。日本の高等教育参加率は他国と比べて決して低くはない。そして日本は高等教育の約３割を短大、高専、もしくは専門学校等に担っているというシステムを（意図的でないにはせよ）採用している。このシステムが好ましいのか、そして高等教育全体から見てどこの部門に今後日本は力を注いでいくべきなのか、他国との比較だけでなく、国内の労働市場の需要と照らしあわせた上で総合的に判断する必要がある。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">例えばアメリカの場合、国としてはコミュニティカレッジ及び専門学校の卒業生を増やしていくという方向で政策が進行中である。現時点でアメリカではコミュニティカレッジや専門学校の需要が増大しているため、国の高等教育政策はその需要に対応している結果といえる。アメリカはその国民性もあって、国際比較にあまり関心を払わない国柄であるというのもあるが、他の国と比較してではなく、労働市場の今後の動向にあわせて高等教育の政策の方向性を決めているというアプローチは参考にすべきだと思う。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">現在の日本では、大学の約４割が定員割れを起こしている。大学に学生をまだ受け入れる余地があるのにも関わらず学生が来ないということは、現時点で日本の大学の市場、特に私立大学、は過剰供給状態にあるということである。そのような中、他の国よりも大学進学率が低いからという理由のみで、大学進学率を上げなければならないという政策を推進することに果たして意味があるのか疑問符がつく。ましてやその学生の送り先の多くが、国公立大学になるならばわからなくもないが、現在定員割れしている私立大学となるならばさらに首をかしげざるを得ない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">大学への進学率を上げること自体に反対ではないが、進学率を上げるためには、受け入れる大学システム側が社会の労働需要に対応しているという前提条件が成立していなければならない。現時点の日本の大学システムはその前提条件がおそらく成立してはいない。定員割れしている大学が数多くあり、大学へ進学するより専門学校へ進む方が得策と考えている学生が少なくないということがその証拠である。大学進学率を上げるならば、特に定員割れしている大学に対して、政府は何らかの形でビジネスモデルの転換を促すような政策が必要なのであろう。</span></p>
<div><span style="font-size: small;">注：</span></div>
<p><span style="font-size: small;">１．OECDの大学進学率は、一年生（留年生を除く）を年齢別に集計し、その数を各年令の人口総数で割り、それぞれの割合を合計した数値を進学率と定義している。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">２．出所：OECD Education at a Glance 2012: Table C4.1. student mobility and foreign students in tertiary education (2005, 2010)</span></p>
<p><span style="font-size: small;">３．出所：OECD Education at a Glance 2012: table C3.1. Entry rates into tertiary education and age distribution of new entrants (2010)</span><br />
<span style="font-size: small;">４．出所：OECD Education at a Glance 2012: table C3.2. Entry rates into tertiary education below the typical age of entry (2010)</span><br />
<span style="font-size: small;">５．日本は２５歳までの大学進学率をＯＥＣＤに報告していないが、８０％の大学１年生が１９歳以下であることから、年齢制限無しの大学進学率である５１％からあまり変化はないと予想される。</span></p>
]]></content:encoded>
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		</item>
		<item>
		<title>アメリカ大学事情　Vol.4　2013年4月29日 給付型の奨学金は効率的か？</title>
		<link>http://www.postsecondaryanalytics.com/us_highed_blog004/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=us_highed_blog004</link>
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		<pubDate>Mon, 29 Apr 2013 15:59:26 +0000</pubDate>
		<dc:creator>Takeshi Yanagiura</dc:creator>
				<category><![CDATA[アメリカ大学事情]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://www.postsecondaryanalytics.com/?p=2549</guid>
		<description><![CDATA[＜告知：パートタイム・リサーチ・アシスタント募集のお知らせ＞ ポストセカンダリ－・アナリティクスは、日本在住の、短期（３ヶ月）のパートタイム・リサーチ・アシスタント（学部生・大学院生）を募集しています（１名）。高等教育に興味があり、英語に自信があり、エクセルを使いこなし、そしてすぐに仕事を始められる方を求めています。データ入力、翻訳、及び簡単な分析を担当して頂きます。時給は１５米ドル、週２０時間の労働時間となります。なおこのポジションは在宅勤務ですので、Skypeなどを通して定期的にスタッフとのミーティングを通して進捗状況を確認していきます。興味のある方は、志望理由を明記の上、履歴書をこちらまで送付してください（日本語・英語どちらでも可）。書類審査の結果、２次面接に進まれる方には、こちらより改めてご連絡差し上げます。採用者が出た時点で締め切りとさせて頂きます。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 最近日本の高等教育で議論され始めている政策の一つが、給付型奨学金の導入のようである。先日も、文部科学大臣が導入を検討しているという記事が見られたが （１）、今までローンのみであった学生援助政策から、給付型を含めた奨学金政策へと舵を切ろうとしている雰囲気をアメリカから見ていて（なんとなくではあるが）感じる。 アメリカにおいては給付型の奨学金の歴史は長い。特に有名な奨学金は１９７２年に導入された、低所得者層を対象にした連邦政府が拠出するペル奨学金であり、年間で学生一人あたり最大５、５５０ドルが給付される。また、連邦政府だけでなく、ほとんどの州政府でも低所得者層出身の学生を対象にした給付型奨学金がある（２） 。返済しなければならないローンと違って、給付型の奨学金は卒業後の返済義務もない。２０１１－１２年度では、約９３７万人（全体の約３７％）の学生がペル奨学金を受け取り、連邦政府は合計３４０億ドル（約３．４兆円）を支出した。受給者の平均額は３，６９５ドルである （３）。 しかし、年々インフレ率を超える勢いで上昇し続ける学費に対して、連邦政府としても給付額を学費の上昇スピードに追いつくようそれなりに努力してきたが、実はペル奨学金は徐々にその購買力を失ってきている。例えば、２０００－０１年度のペル奨学金の最高給付額は３，３００ドルであったが、それに対して州立４年制大学年間平均コスト（学費及、教科書代、そして寮費などを含む）は、９、３２１ドルで、奨学金で賄える割合が３５．４％であった。しかし２０１１－１２年度では、ペル給付金の最高額が前記のように５，５５０ドルまで上昇したにもかかわらず、州立大学の学生の年間平均支払額が１８，８１４ドルまで上昇したため、コストに対するペル奨学金の割合は２９．５％まで低下した（表１）。 表１：ペル奨学金年間最高支給額の州立４年制大学平均費用に占める割合 この際限なく上昇し続ける学費に対して、政府・議会内でも、いつまでこの「いたちごっこ」を続ければいいのかという苛立ちが聞かれるようになってきた。実際、第２期就任直後のオバマ大統領も、所信表明演説で、上昇しつづける大学の学費対策に言及し、次の４年間で上昇し続けるコスト上昇を食い止めるための対策を講じていくことを発表した （４）。 その一方で、奨学金システム自体の効率性を見直すべきであるという動きも最近政府外から起こっている。その代表的なイニシアチブの一つが、２０１２年９月に「ビル・メリンダ　ゲイツ財団」が約３３０万ドル（約３億３千万円）を出資して立ち上げたプロジェクト「奨学金政策の構造と分配の再構想」（Reimagining Aid Design and Delivery）である（５） 。このプロジェクトでは、ゲイツ財団が１４のシンクタンク、非営利団体などに資金を提供し、それぞれの団体に連邦政府奨学金制度、特にペル奨学金、に対してどのように今後改革を行なっていけばよいか研究成果を発表するよう要求したプロジェクトである（６） 。結果、２０１３年２月までに計１４のレポートが発表された（７） 。また今月に入って、カレッジ・ボードも「ペル奨学金再考」（Rethinking Pell Grants）というレポートを発表。ルミナ財団とゲイツ財団によってサポートされたこのプロジェクトは、高等教育政策専門家たちを数度に渡って集めて意見交換会を行い、そこでの結論をレポートにまとめた （８）。 これらのレポートはそれぞれユニークな切り口から興味深い提言を行なっているが、その前提となる問題意識はほぼ共通していて、大体以下に収斂されるといって良い。 １． 奨学金申請手続きの簡素化 ２． 奨学金受給者の卒業率上昇 ３． 奨学金政策のアカウンタビリティの向上 まず、一つ目の申請手続きの簡素化に関して、これは長年指摘されてきた課題の一つである。通常学生は毎年FAFSA(Free Application for Federal Student Aid)と呼ばれる奨学金申請書類を提出しなければならない。この書類の複雑さは有名で、とにかく家計に関して文字通りありとあらゆる情報を書き込まなければならない。それは確定申告よりも複雑といわれており（日本と違って、アメリカは所得が約１００万円以上の国民は全て確定申告を個人で行わなければならない）、その煩雑さから、多くの学生、特に低所得者層出身が、本来ならば受給資格を満たしているのにも関わらず奨学金を申請しないままでいると指摘されている。そして更に問題なのが、それを学生は毎年申請しなければならないということである。 なぜここまでの情報を提出しなければならないのか。それは、ペル奨学金需給資格が家族の収入ではなく、特殊な計算式によって決まるExpected Family Contribution (EFC – 家庭負担期待額)の額によって決定されるからである。ＥＦＣは収入に加えて、不動産資産や貯金額、投資収入、家族構成、兄弟が何人大学に通っているか等、総合的な財産情報を元に決定される。そして、さらなる混乱を招く一因となっているのが、ＥＦＣがその名称にも関わらず、実際に家族が払わなければならない額ではないということである。ＥＦＣは奨学金受給額を算出するためだけに必要とされる情報であり、果たしてＥＦＣがそこまで必要なデータであるのだろうかと、専門家をはじめ、高等教育関係者の間で長年指摘されてきた。 このＥＦＣのもう一つの問題は、その計算の複雑さ故に、学生の家族が実際に奨学金を申請するまで果たしてどれくらいの奨学金額を受け取れるか予測が難しいことである。例えば、ペル奨学金は、ＥＦＣが４，９９５ドルを超えるとその受給資格を失い（９）、自動的にローンに回される 。ＥＦＣの存在を知らずに、自分の収入からペル奨学金を受け取れると予測していた学生が実は受給資格がなかったというパターンはよく聞かれる話である。そしてローンしか受け取れないようであるなら大学に行かないで仕事をするという選択をする学生は少なくない。このような問題点を抱えながら、そこまで厳密にＥＦＣを算出する必要が果たしてあるのか、もっと簡単で、万人に分かりやすいシステムに移行すべきである、というのはよく聞かれる主張である。 次に、ペル奨学金受給者の卒業率増加に関して、ペル受給者の卒業率は一様に低い。２００３－４年度の一年生のうち、ペル奨学金を受け取らなかった学生の6年以内の卒業率（４年制州立大学）が６３．５％であるのに対して、ペル受給者の卒業率は、２４歳以下の学生で５４％、２５歳以上の学生になると１６．８％まで下がる （１０）。そもそも卒業しない学生に奨学金を拠出することははたして意味があることなのかという議論は昔から提起されており、ペル奨学金を大学に入学させるためだけの政策から、卒業することに対して何らかの形でインセンティブを付け加える政策に移行すべきだという意見は専門家内で最近よく聞かれる提案である。この点に関しては、入学すればほぼ卒業できる日本の大学とは異なる、アメリカ特有の問題だといえる。 ペル受給者の卒業率の低さの理由は、様々挙げることができるが、代表的な理由として２つ考えられる。まず一つ目に、アメリカにおいては、収入と学力レベルは強い相関関係にある（必ずしも因果関係ではないが）ということである。アメリカの家庭は家を購入する際、どの学区に子供を通わせることになるのかということを重要視する。それは、学区の教育の質が学区によって大きく変わるからであり、学区内の経済レベルと密接な関係がある。故に富裕層の家庭は良い学区に子供を通わせようとする一方で、貧しい家庭は評判の良くない学区に子供を通わさざるを得なくなり、アメリカ社会の悪循環を生んでいる。 よって裕福な家庭出身の学生は、得てして学力の高い学校で教育を受けているケースが多く、また周りの友人も大学に行くことがほぼ常識化している環境にいるため、大学教育にもスムーズに移行できる学生が多い一方で、貧困層出身の学生は大学進学者がまだ少数であり、また高校全体のレベルも大学進学者を基準にして授業を行うことが困難であるため、その高校の卒業生が大学教育についていけないというケースがままある。そしてペル奨学金の多くは後者のタイプの高校を卒業する学生に給付されるために、大学に入学することができても学力がついていかず途中で挫折して退学する場合が少なくない。これらは教育格差と経済格差が密接に関わり合っているアメリカ特有の課題なのかもしれない。 卒業率が低いもう一つの理由はやはり経済的理由であるといってよい。最初にも述べたが、ペル奨学金の購買力は徐々に低下してきている。従って、奨学金だけでは学費を支払うことはできず、学生はアルバイトなどをしなければならなくなり、それによって学業に専念できなくなるというパターンである。そしてこれらの学生は他の学生よりむしろ学業により専念しなければならないのに、その時間の確保が困難になり、結果途中で学業を諦めざるを得なくなる、という結果になる。 低い卒業率は決してペル奨学金のせいではないが、これらの理由は奨学金を給付するだけでは根本的な解決にはならないということを物語っているといえよう。従って政策関係者の中では、奨学金を与えるだけでなく、それ以外にもサポートを組み込んで行かなければならないという意見が出ている。政治家もその事情は理解しており、現段階では、平均ＧＰＡが２．０を下回るかもしくは、学期の平均単位取得率（C以上の単位÷履修単位数）が６７％を下回った場合は奨学金受給資格が一時停止となり、学期の最初に大学のアドバイザーもしくは教員と面談を行い、そして彼らを通して奨学金資格の再取得を申請しなければならない （１１）。ただ現場レベルではこの再申請プロセスが形骸化している大学も数多く、ただサインをするだけの儀式となり、実際には余計な現場の仕事量を増やしただけという批判もある。 そして３つめの奨学金政策のアカウンタビリティ（説明責任）の向上に関して、これは納税者と家計に対するアカウンタビリティという観点にわけて述べて行かなければならない。ただ家計に対するアカウンタビリティに関しては、先ほどＥＦＣに関して述べたこととほぼ重なるので、ここでは、納税者に対するアカウンタビリティに絞って述べていく。 納税者に対するアカウンタビリティとして、最も重要なことは奨学金政策分析である。すなわち投入された税金に対して、果たしてどのような効果を生んだのか、その効果は目標を超えているのかそれとも下回っているのか、もっと効果的に目標は達成できないのか等、政府にはそれらを納税者に詳細に報告する義務がある。 これらの費用対効果分析は、今後ペル奨学金の拠出額を大幅に増やすことが困難であるアメリカには特に重要なものとなる。将来に渡って全体の額を増やすことができないならば、その費用対効果を増やしていくしか選択肢は無いからである。全員に奨学金を与えることができないのであれば、誰が一番必要としているのかを見定め、その学生から凖に必要性に応じて奨学金をできるだけ多くの学生に給付していくというメカニズムが設計されなければならない。そのためにはより精緻な政策分析が必要とされる。 しかしながら、アメリカの連邦政府の奨学金政策分析はこれらの質問に満足いく回答を与えることはできていない。例えば、ペル奨学金受給者の卒業率が先ほど４年制大学で５４％であると紹介したが、それは全国平均であり、サンプルデータに基づいた学生調査結果であり、事実とは若干異なる可能性がある。また、機関レベルでは、奨学金受給者の卒業率の報告は義務付けられていないため、例えば大学ごとにペル奨学金受給者の卒業率などは不明である（もっとも、機関レベルの卒業率はIPEDSを通して今後数年の間に報告が義務付けられることが予想される）。 [...]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p><span style="font-size: small;">＜告知：パートタイム・リサーチ・アシスタント募集のお知らせ＞</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ポストセカンダリ－・アナリティクスは、日本在住の、短期（３ヶ月）のパートタイム・リサーチ・アシスタント（学部生・大学院生）を募集しています（１名）。高等教育に興味があり、英語に自信があり、エクセルを使いこなし、そしてすぐに仕事を始められる方を求めています。データ入力、翻訳、及び簡単な分析を担当して頂きます。時給は１５米ドル、週２０時間の労働時間となります。なおこのポジションは在宅勤務ですので、Skypeなどを通して定期的にスタッフとのミーティングを通して進捗状況を確認していきます。興味のある方は、志望理由を明記の上、履歴書を<a href="mailto:takeshi.yanagiura@postsecondaryanalytics.com">こちら</a>まで送付してください（日本語・英語どちらでも可）。書類審査の結果、２次面接に進まれる方には、こちらより改めてご連絡差し上げます。採用者が出た時点で締め切りとさせて頂きます。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――</span></p>
<p><span style="font-size: small;">最近日本の高等教育で議論され始めている政策の一つが、給付型奨学金の導入のようである。先日も、文部科学大臣が導入を検討しているという記事が見られたが （１）、今までローンのみであった学生援助政策から、給付型を含めた奨学金政策へと舵を切ろうとしている雰囲気をアメリカから見ていて（なんとなくではあるが）感じる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">アメリカにおいては給付型の奨学金の歴史は長い。特に有名な奨学金は１９７２年に導入された、低所得者層を対象にした連邦政府が拠出するペル奨学金であり、年間で学生一人あたり最大５、５５０ドルが給付される。また、連邦政府だけでなく、ほとんどの州政府でも低所得者層出身の学生を対象にした給付型奨学金がある（２） 。返済しなければならないローンと違って、給付型の奨学金は卒業後の返済義務もない。２０１１－１２年度では、約９３７万人（全体の約３７％）の学生がペル奨学金を受け取り、連邦政府は合計３４０億ドル（約３．４兆円）を支出した。受給者の平均額は３，６９５ドルである （３）。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">しかし、年々インフレ率を超える勢いで上昇し続ける学費に対して、連邦政府としても給付額を学費の上昇スピードに追いつくようそれなりに努力してきたが、実はペル奨学金は徐々にその購買力を失ってきている。例えば、２０００－０１年度のペル奨学金の最高給付額は３，３００ドルであったが、それに対して州立４年制大学年間平均コスト（学費及、教科書代、そして寮費などを含む）は、９、３２１ドルで、奨学金で賄える割合が３５．４％であった。しかし２０１１－１２年度では、ペル給付金の最高額が前記のように５，５５０ドルまで上昇したにもかかわらず、州立大学の学生の年間平均支払額が１８，８１４ドルまで上昇したため、コストに対するペル奨学金の割合は２９．５％まで低下した（表１）。</span><br />
<span style="font-size: small;"><br />
</span></p>
<p style="text-align: center;">表１：ペル奨学金年間最高支給額の州立４年制大学平均費用に占める割合</p>
<p><a href="http://www.postsecondaryanalytics.com/wp-content/uploads/2013/04/Blog4Table1.png"><img class="aligncenter size-medium wp-image-2555" alt="Blog4Table1" src="http://www.postsecondaryanalytics.com/wp-content/uploads/2013/04/Blog4Table1-300x204.png" width="300" height="204" /></a></p>
<p><span style="font-size: small;">この際限なく上昇し続ける学費に対して、政府・議会内でも、いつまでこの「いたちごっこ」を続ければいいのかという苛立ちが聞かれるようになってきた。実際、第２期就任直後のオバマ大統領も、所信表明演説で、上昇しつづける大学の学費対策に言及し、次の４年間で上昇し続けるコスト上昇を食い止めるための対策を講じていくことを発表した （４）。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">その一方で、奨学金システム自体の効率性を見直すべきであるという動きも最近政府外から起こっている。その代表的なイニシアチブの一つが、２０１２年９月に「ビル・メリンダ　ゲイツ財団」が約３３０万ドル（約３億３千万円）を出資して立ち上げたプロジェクト「奨学金政策の構造と分配の再構想」（Reimagining Aid Design and Delivery）である（５） 。このプロジェクトでは、ゲイツ財団が１４のシンクタンク、非営利団体などに資金を提供し、それぞれの団体に連邦政府奨学金制度、特にペル奨学金、に対してどのように今後改革を行なっていけばよいか研究成果を発表するよう要求したプロジェクトである（６） 。結果、２０１３年２月までに計１４のレポートが発表された（７） 。また今月に入って、カレッジ・ボードも「ペル奨学金再考」（Rethinking Pell Grants）というレポートを発表。ルミナ財団とゲイツ財団によってサポートされたこのプロジェクトは、高等教育政策専門家たちを数度に渡って集めて意見交換会を行い、そこでの結論をレポートにまとめた （８）。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">これらのレポートはそれぞれユニークな切り口から興味深い提言を行なっているが、その前提となる問題意識はほぼ共通していて、大体以下に収斂されるといって良い。</span></p>
<p style="padding-left: 30px;"><span style="font-size: small;">１． 奨学金申請手続きの簡素化<br />
<span style="font-size: small;">２． 奨学金受給者の卒業率上昇<br />
<span style="font-size: small;">３． 奨学金政策のアカウンタビリティの向上</span></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">まず、一つ目の申請手続きの簡素化に関して、これは長年指摘されてきた課題の一つである。通常学生は毎年FAFSA(Free Application for Federal Student Aid)と呼ばれる奨学金申請書類を提出しなければならない。この書類の複雑さは有名で、とにかく家計に関して文字通りありとあらゆる情報を書き込まなければならない。それは確定申告よりも複雑といわれており（日本と違って、アメリカは所得が約１００万円以上の国民は全て確定申告を個人で行わなければならない）、その煩雑さから、多くの学生、特に低所得者層出身が、本来ならば受給資格を満たしているのにも関わらず奨学金を申請しないままでいると指摘されている。そして更に問題なのが、それを学生は毎年申請しなければならないということである。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">なぜここまでの情報を提出しなければならないのか。それは、ペル奨学金需給資格が家族の収入ではなく、特殊な計算式によって決まるExpected Family Contribution (EFC – 家庭負担期待額)の額によって決定されるからである。ＥＦＣは収入に加えて、不動産資産や貯金額、投資収入、家族構成、兄弟が何人大学に通っているか等、総合的な財産情報を元に決定される。そして、さらなる混乱を招く一因となっているのが、ＥＦＣがその名称にも関わらず、実際に家族が払わなければならない額ではないということである。ＥＦＣは奨学金受給額を算出するためだけに必要とされる情報であり、果たしてＥＦＣがそこまで必要なデータであるのだろうかと、専門家をはじめ、高等教育関係者の間で長年指摘されてきた。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">このＥＦＣのもう一つの問題は、その計算の複雑さ故に、学生の家族が実際に奨学金を申請するまで果たしてどれくらいの奨学金額を受け取れるか予測が難しいことである。例えば、ペル奨学金は、ＥＦＣが４，９９５ドルを超えるとその受給資格を失い（９）、自動的にローンに回される 。ＥＦＣの存在を知らずに、自分の収入からペル奨学金を受け取れると予測していた学生が実は受給資格がなかったというパターンはよく聞かれる話である。そしてローンしか受け取れないようであるなら大学に行かないで仕事をするという選択をする学生は少なくない。このような問題点を抱えながら、そこまで厳密にＥＦＣを算出する必要が果たしてあるのか、もっと簡単で、万人に分かりやすいシステムに移行すべきである、というのはよく聞かれる主張である。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">次に、ペル奨学金受給者の卒業率増加に関して、ペル受給者の卒業率は一様に低い。２００３－４年度の一年生のうち、ペル奨学金を受け取らなかった学生の6年以内の卒業率（４年制州立大学）が６３．５％であるのに対して、ペル受給者の卒業率は、２４歳以下の学生で５４％、２５歳以上の学生になると１６．８％まで下がる （１０）。そもそも卒業しない学生に奨学金を拠出することははたして意味があることなのかという議論は昔から提起されており、ペル奨学金を大学に入学させるためだけの政策から、卒業することに対して何らかの形でインセンティブを付け加える政策に移行すべきだという意見は専門家内で最近よく聞かれる提案である。</span><span style="font-size: small;">この点に関しては、入学すればほぼ卒業できる日本の大学とは異なる、アメリカ特有の問題だといえる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ペル受給者の卒業率の低さの理由は、様々挙げることができるが、代表的な理由として２つ考えられる。まず一つ目に、アメリカにおいては、収入と学力レベルは強い相関関係にある（必ずしも因果関係ではないが）ということである。アメリカの家庭は家を購入する際、どの学区に子供を通わせることになるのかということを重要視する。それは、学区の教育の質が学区によって大きく変わるからであり、学区内の経済レベルと密接な関係がある。故に富裕層の家庭は良い学区に子供を通わせようとする一方で、貧しい家庭は評判の良くない学区に子供を通わさざるを得なくなり、アメリカ社会の悪循環を生んでいる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">よって裕福な家庭出身の学生は、得てして学力の高い学校で教育を受けているケースが多く、また周りの友人も大学に行くことがほぼ常識化している環境にいるため、大学教育にもスムーズに移行できる学生が多い一方で、貧困層出身の学生は大学進学者がまだ少数であり、また高校全体のレベルも大学進学者を基準にして授業を行うことが困難であるため、その高校の卒業生が大学教育についていけないというケースがままある。そしてペル奨学金の多くは後者のタイプの高校を卒業する学生に給付されるために、大学に入学することができても学力がついていかず途中で挫折して退学する場合が少なくない。これらは教育格差と経済格差が密接に関わり合っているアメリカ特有の課題なのかもしれない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">卒業率が低いもう一つの理由はやはり経済的理由であるといってよい。最初にも述べたが、ペル奨学金の購買力は徐々に低下してきている。従って、奨学金だけでは学費を支払うことはできず、学生はアルバイトなどをしなければならなくなり、それによって学業に専念できなくなるというパターンである。そしてこれらの学生は他の学生よりむしろ学業により専念しなければならないのに、その時間の確保が困難になり、結果途中で学業を諦めざるを得なくなる、という結果になる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">低い卒業率は決してペル奨学金のせいではないが、これらの理由は奨学金を給付するだけでは根本的な解決にはならないということを物語っているといえよう。従って政策関係者の中では、奨学金を与えるだけでなく、それ以外にもサポートを組み込んで行かなければならないという意見が出ている。政治家もその事情は理解しており、現段階では、平均ＧＰＡが２．０を下回るかもしくは、学期の平均単位取得率（C以上の単位÷履修単位数）が６７％を下回った場合は奨学金受給資格が一時停止となり、学期の最初に大学のアドバイザーもしくは教員と面談を行い、そして彼らを通して奨学金資格の再取得を申請しなければならない （１１）。ただ現場レベルではこの再申請プロセスが形骸化している大学も数多く、ただサインをするだけの儀式となり、実際には余計な現場の仕事量を増やしただけという批判もある。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">そして３つめの奨学金政策のアカウンタビリティ（説明責任）の向上に関して、これは納税者と家計に対するアカウンタビリティという観点にわけて述べて行かなければならない。ただ家計に対するアカウンタビリティに関しては、先ほどＥＦＣに関して述べたこととほぼ重なるので、ここでは、納税者に対するアカウンタビリティに絞って述べていく。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">納税者に対するアカウンタビリティとして、最も重要なことは奨学金政策分析である。すなわち投入された税金に対して、果たしてどのような効果を生んだのか、その効果は目標を超えているのかそれとも下回っているのか、もっと効果的に目標は達成できないのか等、政府にはそれらを納税者に詳細に報告する義務がある。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">これらの費用対効果分析は、今後ペル奨学金の拠出額を大幅に増やすことが困難であるアメリカには特に重要なものとなる。将来に渡って全体の額を増やすことができないならば、その費用対効果を増やしていくしか選択肢は無いからである。全員に奨学金を与えることができないのであれば、誰が一番必要としているのかを見定め、その学生から凖に必要性に応じて奨学金をできるだけ多くの学生に給付していくというメカニズムが設計されなければならない。そのためにはより精緻な政策分析が必要とされる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">しかしながら、アメリカの連邦政府の奨学金政策分析はこれらの質問に満足いく回答を与えることはできていない。例えば、ペル奨学金受給者の卒業率が先ほど４年制大学で５４％であると紹介したが、それは全国平均であり、サンプルデータに基づいた学生調査結果であり、事実とは若干異なる可能性がある。また、機関レベルでは、奨学金受給者の卒業率の報告は義務付けられていないため、例えば大学ごとにペル奨学金受給者の卒業率などは不明である（もっとも、機関レベルの卒業率はIPEDSを通して今後数年の間に報告が義務付けられることが予想される）。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">しかし、それ以上に長年のアカウンタビリティの一番の課題は、そもそも本来大学に行くことができない学生のために創設されたペル奨学金が、はたして実際にその目的をどこまで達成することができているのかという根本問題に関して、円に換算して数兆円という額を毎年支出しているのにも関わらず実は正確にはわかっていないということである 。その理由はいたって簡単である。連邦政府は奨学金受給者のデータは豊富に集めているのに、奨学金を受け取っていない学生のデータが全く存在しないが故に、比較分析ができないのである。また大学に入学していない学生のデータもない。故に奨学金によって果たしてどれくらいの学生が進学をするようになったのかということも知ることができていないのが現状である。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">その一方で、長年凖実験的アプローチの分析が近年頻繁に行われてきたので、それによってある程度の一般的な給付型の奨学金の効果はわかってはいるが、実際のペル奨学金政策の費用対効果の全貌ははっきりとはわかっていない（１２）。その分析を可能にするためには、最低でも全ての高校生の個人レベルのデータ、それも家族の収入のデータが必要になる。州政府レベルではそのデータを集めているところが増えており、今後各州ではそのような分析が進んでいくと予想されるが、国レベルの分析はFAFSAを通してしかデータが集まらない現時点では不可能であり、今後もその分析が行われることはないと予想される。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">以上簡単に現在のペル奨学金の課題に関して述べてきたが、もし日本で給付型の奨学金の導入を志向するのであれば、アメリカの現在の課題から学べることは少なくないと思う。個人的には、以下の点を考慮すべきであると思う。</span></p>
<p><span style="font-size: small;"><span style="text-decoration: underline;">• 奨学金受給資格をわかりやすくすること。</span></span><br />
<span style="font-size: small;"><span style="font-size: small;">o 但し、所得制限額を固定するのではなく、数年に一度、インフレ（もしくはデフレ）と連動させて変化できるようにする。</span></span></p>
<p><span style="text-decoration: underline;"><span style="font-size: small;">• 奨学金申請プロセスの簡易化。</span></span><br />
o<span style="font-size: small;">申請は一度済ませば最大４年間受け取れるようにする。ただし、２年生以降でも申請できるようにする。</span></p>
<p><span style="font-size: small;"><span style="text-decoration: underline;">• 奨学金受給者が毎年受給資格を更新するための学業基準値を設ける。</span><br />
<span style="font-size: small;">o 受給資格を喪失したらローンへ切り替わるシステムを導入する。</span></span></p>
<p><span style="font-size: small;"><span style="text-decoration: underline;">• 奨学金を学生に直接支給するのではなく、大学を通して支給する。</span><br />
<span style="font-size: small;">o 奨学金は本来使われるべきものに優先して支払われるよう徹底する。<br />
<span style="font-size: small;">o 学費、その他必要経費を差し引いて残った額を学生へ支給。<br />
<span style="font-size: small;">o 毎月支給ではなく、年一度の支給。</span></span></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;"><span style="text-decoration: underline;">• 政府内で奨学金分析体制を整える。</span><br />
<span style="font-size: small;">o 受給者の個人データを入試データ、成績、及び就職に至るまで集め、追跡する。<br />
<span style="font-size: small;">o 奨学金受給者は毎年の学生調査アンケート参加を必須とし、学生の生活・学習パターンに関して情報を集められるようにする。<br />
<span style="font-size: small;">o 各大学は奨学金制度に参加する対価として、奨学金受給者の進級率、卒業率、そして就職率を奨学金受給者以外の学生と比較して報告する義務を負う。<br />
<span style="font-size: small;">o 奨学金分析専門スタッフを配属する。</span></span></span></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;"><span style="text-decoration: underline;"><strong>出典</strong></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[1]毎日新聞　２０１３年４月２３日“給付型奨学金：大学生も返済義務なし、対象拡大－－文科省」<a href="http://mainichi.jp/feature/news/20130423ddm001100073000c.html">http://mainichi.jp/feature/news/20130423ddm001100073000c.html</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[2] National Association of State Student Grant &amp; Aid Programs. 42<sup>nd</sup> Annual Surveys. <a href="http://www.nassgap.org/viewrepository.aspx?categoryID=3">http://www.nassgap.org/viewrepository.aspx?categoryID=3</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[3] CollegeBoard. “Trends in Student Aid 2012” <a href="http://advocacy.collegeboard.org/sites/default/files/student-aid-2012-full-report.pdf">http://advocacy.collegeboard.org/sites/default/files/student-aid-2012-full-report.pdf</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[4] The White House. The 2013 State of the Union.  <a href="http://www.whitehouse.gov/state-of-the-union-2013">http://www.whitehouse.gov/state-of-the-union-2013</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[5] Bill and Melinda Gates Foundation. “New Grants to Reimagine Financial Aid &amp; Help Increase Postsecondary Access, Success and Completion.” <a href="http://www.gatesfoundation.org/media-center/press-releases/2012/09/postsecondary-financial-aid-grants-announcement">http://www.gatesfoundation.org/media-center/press-releases/2012/09/postsecondary-financial-aid-grants-announcement</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[6] Postsecondary Education Opportunity. “Bill &amp; Melinda Gates Foundation: Reimagining Aid Design and Delviery” (March 2013).</span></p>
<p><span style="font-size: small;">[7] State Higher Education Executive Officers. “Reimagining Aid Design and Delivery Project Reports.” <a href="http://www.sheeo.org/resources/publications/reimagining-aid-design-and-delivery-project-reports">http://www.sheeo.org/resources/publications/reimagining-aid-design-and-delivery-project-reports</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[8] CollegeBoard. “Rethinking Student Aid.” <a href="http://advocacy.collegeboard.org/college-affordability-financial-aid/rethinking-student-aid">http://advocacy.collegeboard.org/college-affordability-financial-aid/rethinking-student-aid</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[9] U.S. Department of Education. “2012-13 Pell Payment Schedule.” <a href="http://www.ifap.ed.gov/dpcletters/attachments/P1201Attach20122013PaymentSchedules.pdf">http://www.ifap.ed.gov/dpcletters/attachments/P1201Attach20122013PaymentSchedules.pdf</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[10] National Postsecondary Student Aid Survey (NPSAS) QuickStatsを用いて筆者が独自に算出。<a href="http://nces.ed.gov/surveys/npsas/">http://nces.ed.gov/surveys/npsas/</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[11] FinAid! The Smart Student Guide to Financial Aid. “SAP Appeal.” <a href="http://www.finaid.org/educators/pj/sapappeals.phtml">http://www.finaid.org/educators/pj/sapappeals.phtml</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">[12] Mundel. S., “Do Increases in Pell and Other Grant Awards Increase CollegeGoing among Lower Income High School Graduates?: Evidence from a “Natural Experiment” <a href="http://www.brookings.edu/~/media/Research/Files/Papers/2008/11/12%20pell%20grants%20rice/12_pell_grants_mundel.PDF">http://www.brookings.edu/~/media/Research/Files/Papers/2008/11/12%20pell%20grants%20rice/12_pell_grants_mundel.PDF</a></span></p>
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		</item>
		<item>
		<title>アメリカ大学事情　Vol.3　2013年4月22日 アメリカから見た日本のインスティテューショナル・リサーチ　その１－「学生串刺しデータファイル」に思うこと、及びＳＱＬのすすめ。</title>
		<link>http://www.postsecondaryanalytics.com/us_highed_blog003/?utm_source=rss&#038;utm_medium=rss&#038;utm_campaign=us_highed_blog003</link>
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		<pubDate>Mon, 22 Apr 2013 14:31:58 +0000</pubDate>
		<dc:creator>Takeshi Yanagiura</dc:creator>
				<category><![CDATA[アメリカ大学事情]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://www.postsecondaryanalytics.com/?p=2422</guid>
		<description><![CDATA[前回そして前々回と、ムークスに関する内容の記事を載せたが、今回は視点を変えて日本の大学のインスティテューショナル・リサーチ（ＩＲ）に関連する内容にしようと思う。ＩＲが何かとはここ数年日本の高等教育界で様々議論されてきているが、詳しくはこちらを参照されたい。 最近日本のＩＲ関係者の中でよく聞かれるようになった業界用語に「学生串刺しデータファイル」（以下「串刺しデータ」）　という言葉がある。初めてその言葉を聞いたときは、どういう意味かよくわからなかったが、よくよく聞いてみると、学生を入試から卒業、もしくは就職まで追跡したデータファイル、ということである。一人ひとりの学生に様々なデータを串刺しするように追加していくということで、串刺しデータと呼ぶそうである。いわゆる英語で言うLongitudinal Dataであるが、この学生一人ひとりを追跡する串刺しデータを作ることが近年多くの大学でＩＲのテーマとなっているようである。確かに、串刺しデータから得られる情報は有意義ではある。しかし、それは「データがないよりは」、という前文付きである。また、アメリカにおいてはＩＲが串刺しデータを軸に仕事を展開する、というわけではない。ゆえに、若干串刺しデータの話を聞くたびに、なんとなくではあるが違和感を感じていた。 まず、ここでＩＲの目的を再度明確にしておきたい。それは大学内にあるデータを分析して、有用な情報を抽出することである。ＩＲの分析範囲は学生だけにとどまらない。財務分析も行うし、教員の労働分析や、授業スケジュールの効率性分析、それこそ大学に関するすべてのデータ分析の責任を負うのがＩＲである。とにかくデータを眺めてみて、そこから得た有用な情報を意思決定に反映させる、それがＩＲの根本の役割である。従って、ＩＲに大学内の「全て」のデータをアクセスさせるようにしなければならない。そして学内のＩＲの存在価値はアクセスできるデータ数に比例して累乗的に増えていくといって良い。 ＩＲに長年携わってきて思うことは、ＩＲにとってのリサーチクエスチョン（研究・分析目的）はそれこそ無数にあり、大学組織とともに日々変化し、その移りゆく一つ一つのリサーチクエスチョンに対応させてデータ分析ファイルを作らなければならないということである。時には学生の串刺しデータが必要になる時もあれば、学生とは無関係の分析も行うこともある。いわば、日々変わりゆくリサーチクエスチョンに対して分析用ファイルを日々粛々と作成すること、それがＩＲの仕事の大半とも言える。実際、私も分析作業よりも分析するためのデータファイルを作成する作業のほうにより時間を費やしていることの方が多かった。 もっとも、学生の串刺しデータを作成してそれを元に分析作業を行うという作業は、現在の日本の大学の環境を考えた時、限られたリソースで行える有効な最初の一歩であるのかもしれない。それを説明するために、ここで簡単に日本のIRのここ数年の流れを振り返ってみたい。 日本の多くの大学は業務分野（例：入試、教務、人事、財務等）ごとに、業務改善の為にソフトウェアをベンダーから購入したり、もしくは大学によっては独自に開発したソフトを使用してきた。これらのソフトウェアを通して、データはそれなりに集積されていくものの、分析を第一目的にしたソフトウェアではないため、データ分析が行いやすいようにデータベースも構築されてはいないし、分析も積極的には行われて来なかった。 やがてデータに基付いた大学運営に対する関心がアメリカの影響を受けて日本の高等教育界の中でも喚起され始め、その流れの中でＩＲが注目を集め、徐々にＩＲ的な機能を設置する大学が増えてきた。ところがまず多くのＩＲが直面した課題が、ＩＲに分析すべきデータが集まらない、という奇妙な事態であった。データ分析の役割を担うべきＩＲに対して、それまでのお役所的メンタリティから抜け出せなかった各部局がデータを提供することに難色を示したという経験は多くのＩＲ担当者が思い当たるものであろう。ある部局はデータをシェアすることを拒否もしくは無視したり、またはデータを提供することには理解を示したものの、無数の書類を提出した上でようやく必要なデータが受け取れる、というようなつれない対応が当初のIR に対する反応であった。そのような状況下では、日本の初期段階のＩＲは実践段階に移行することは至難の業であったといえる。 この状態を打開すべく、いくつかのイニシアチブが起こり始めた。一つはアンケートなどを通して学生調査を行い、自らＩＲ独自のデータを集めるという展開であり、もうひとつは、各部局が保管しているデータを、ＩＲに関係の有りそうな学生データを定期的に抽出できるようにして１箇所に集めて、それを元に分析作業を行うという方法である。いわゆる後者が上記の学生串刺しデータファイルにあたる。近年はこの串刺しデータ分析および学生調査を行うことがＩＲの基本業務として認知され始めてきているようである。しかし最初に述べたように、これはＩＲの本来の作業の一部分しかカバーできていない。 それでは今後はどうしていけばいいのであろうか。今後更にＩＲが学生串刺しデータファイルを軸にした作業から脱皮し、さらなる展開を行うために必要なこと、それは単純すぎるのかもしれないが、ＩＲ担当者がＳＱＬのスキルを持つことである。ＳＱＬはデータベース言語のことを指すが、現時点の日本のＩＲの発展を妨げている一つの理由、それは大多数のＩＲスタッフがＳＱＬの知識を持ち合わせていないことに起因している。ＩＲスタッフがＳＱＬを知らないが故に、誰かにフラットファイルにデータをいちいち用意してもらってそれに基づいてエクセル・ＳＰＳＳで分析作業を行わざるをえなくなっている、要するにIRの生産性が低く、そこに日本のＩＲの停滞の一因がある。 大学に現存するデータ量はとにかく膨大であり、何百、もしくはそれ以上のテーブルが存在する。従って、それを誰かに頼んでいちいちフラットファイルにデータを落としてもらってそこから分析を行うことは時間が掛かるし非効率である。ＳＱＬ言語を理解すれば、誰かに頼んでフラットファイルにデータを落としてもらう必要がなくなり、ＩＲが分析をデータベースソフトウェアを通じて行えるようになる。ＭＳアクセスであっても、ＭＳ ＳＱＬでも、ＭｙＳＱＬでも、オラクルでもなんでもいい。とにかく日本のＩＲ担当者はＳＱＬを学び、それをもとに分析するスキルを身に着けていくことが急務である。 ＳＱＬを学ぶメリットは膨大なデータを簡単に扱えるということだけではない。ＳＱＬを学べばおそらくＩＲ担当者は組織の縛りを飛び越えられる可能性も上がる。現時点では、多くの大学が、各部局のデータ担当者から、部局の所有するデータベースから抽出されたデータをＣＳＶファイルで受け取り、そうして集まったファイルをＩＴ担当者が組み合わせて串刺しデータを作り、ＩＲがそれを受け取ってデータ分析を行う。いわば、ひとつの分析を行うまでに、複数人の手を経ている。これでは非効率であるし、ファイル作成過程でエラーが出やすい。 ＩＲ担当者がＳＱＬを理解すれば、この中間の役割を担う人たちの作業が不必要になる。ＩＲが自らのＰＣにＳＱＬのソフトウェアをインストールして、そこから、ＯＤＢＣ(Open Database Connectivity)ツールを用いて、直接各部局のデータベースに読み取り専用で直接アクセスできるようにしてしまえばいい（もちろんそれなりのセキュリティを確保した上であるが）。そうすると、ＩＲ担当者は、各部局にあるデータベースの中にあるテーブルを全て閲覧できるようになる。そして、必要に応じて各データベースからＳＱＬに必要なデータを自分のＰＣにインストールされたＳＱＬソフトウェアに取り込み、ＳＱＬを駆使して分析を行う。アメリカではこのようにＳＱＬを中心に分析作業を行えるＩＲが最も重宝されているということは意外と知られていない。 ＩＲは高等教育研究者と違って、一つのデータ分析に時間をかけることができない。いかに素早く、多領域に渡る一つ一つの分析を数多く効率よくこなしていくかが鍵である。それが故に、誰かにデータを用意してもらうのでは仕事にならないので、自らデータを手に入れて、分析用のファイルを素早く作るスキルを持つ必要がある。私も、過去ＩＲスタッフを採用した時、新しく入ったスタッフには何よりも最初にＳＱＬをとにかく最初に教えてきた。ＳＱＬを知ると知らないとでは、作業の効率性は雲泥の差であるからである。日本のＩＲ担当者もいち早く、ＳＱＬを学ぶことを薦めたい。知っていて決して損することのないスキルであると思う。]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p><span style="font-size: small;">前回そして前々回と、ムークスに関する内容の記事を載せたが、今回は視点を変えて日本の大学のインスティテューショナル・リサーチ（ＩＲ）に関連する内容にしようと思う。ＩＲが何かとはここ数年日本の高等教育界で様々議論されてきているが、詳しくは<a href="http://www.zam.go.jp/n00/pdf/ni005012.pdf" target="_blank">こちら</a>を参照されたい。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">最近日本のＩＲ関係者の中でよく聞かれるようになった業界用語に「学生串刺しデータファイル」（以下「串刺しデータ」）　という言葉がある。初めてその言葉を聞いたときは、どういう意味かよくわからなかったが、よくよく聞いてみると、学生を入試から卒業、もしくは就職まで追跡したデータファイル、ということである。一人ひとりの学生に様々なデータを串刺しするように追加していくということで、串刺しデータと呼ぶそうである。いわゆる英語で言うLongitudinal Dataであるが、この学生一人ひとりを追跡する串刺しデータを作ることが近年多くの大学でＩＲのテーマとなっているようである。確かに、串刺しデータから得られる情報は有意義ではある。しかし、それは「データがないよりは」、という前文付きである。また、アメリカにおいてはＩＲが串刺しデータを軸に仕事を展開する、というわけではない。ゆえに、若干串刺しデータの話を聞くたびに、なんとなくではあるが違和感を感じていた。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">まず、ここでＩＲの目的を再度明確にしておきたい。それは大学内にあるデータを分析して、有用な情報を抽出することである。ＩＲの分析範囲は学生だけにとどまらない。財務分析も行うし、教員の労働分析や、授業スケジュールの効率性分析、それこそ大学に関するすべてのデータ分析の責任を負うのがＩＲである。とにかくデータを眺めてみて、そこから得た有用な情報を意思決定に反映させる、それがＩＲの根本の役割である。従って、ＩＲに大学内の「全て」のデータをアクセスさせるようにしなければならない。そして学内のＩＲの存在価値はアクセスできるデータ数に比例して累乗的に増えていくといって良い。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ＩＲに長年携わってきて思うことは、ＩＲにとってのリサーチクエスチョン（研究・分析目的）はそれこそ無数にあり、大学組織とともに日々変化し、その移りゆく一つ一つのリサーチクエスチョンに対応させてデータ分析ファイルを作らなければならないということである。時には学生の串刺しデータが必要になる時もあれば、学生とは無関係の分析も行うこともある。いわば、日々変わりゆくリサーチクエスチョンに対して分析用ファイルを日々粛々と作成すること、それがＩＲの仕事の大半とも言える。実際、私も分析作業よりも分析するためのデータファイルを作成する作業のほうにより時間を費やしていることの方が多かった。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">もっとも、学生の串刺しデータを作成してそれを元に分析作業を行うという作業は、現在の日本の大学の環境を考えた時、限られたリソースで行える有効な最初の一歩であるのかもしれない。それを説明するために、ここで簡単に日本のIRのここ数年の流れを振り返ってみたい。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">日本の多くの大学は業務分野（例：入試、教務、人事、財務等）ごとに、業務改善の為にソフトウェアをベンダーから購入したり、もしくは大学によっては独自に開発したソフトを使用してきた。これらのソフトウェアを通して、データはそれなりに集積されていくものの、分析を第一目的にしたソフトウェアではないため、データ分析が行いやすいようにデータベースも構築されてはいないし、分析も積極的には行われて来なかった。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">やがてデータに基付いた大学運営に対する関心がアメリカの影響を受けて日本の高等教育界の中でも喚起され始め、その流れの中でＩＲが注目を集め、徐々にＩＲ的な機能を設置する大学が増えてきた。ところがまず多くのＩＲが直面した課題が、ＩＲに分析すべきデータが集まらない、という奇妙な事態であった。データ分析の役割を担うべきＩＲに対して、それまでのお役所的メンタリティから抜け出せなかった各部局がデータを提供することに難色を示したという経験は多くのＩＲ担当者が思い当たるものであろう。ある部局はデータをシェアすることを拒否もしくは無視したり、またはデータを提供することには理解を示したものの、無数の書類を提出した上でようやく必要なデータが受け取れる、というようなつれない対応が当初のIR に対する反応であった。そのような状況下では、日本の初期段階のＩＲは実践段階に移行することは至難の業であったといえる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">この状態を打開すべく、いくつかのイニシアチブが起こり始めた。一つはアンケートなどを通して学生調査を行い、自らＩＲ独自のデータを集めるという展開であり、もうひとつは、各部局が保管しているデータを、ＩＲに関係の有りそうな学生データを定期的に抽出できるようにして１箇所に集めて、それを元に分析作業を行うという方法である。いわゆる後者が上記の学生串刺しデータファイルにあたる。近年はこの串刺しデータ分析および学生調査を行うことがＩＲの基本業務として認知され始めてきているようである。しかし最初に述べたように、これはＩＲの本来の作業の一部分しかカバーできていない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">それでは今後はどうしていけばいいのであろうか。今後更にＩＲが学生串刺しデータファイルを軸にした作業から脱皮し、さらなる展開を行うために必要なこと、それは単純すぎるのかもしれないが、ＩＲ担当者がＳＱＬのスキルを持つことである。ＳＱＬはデータベース言語のことを指すが、現時点の日本のＩＲの発展を妨げている一つの理由、それは大多数のＩＲスタッフがＳＱＬの知識を持ち合わせていないことに起因している。ＩＲスタッフがＳＱＬを知らないが故に、誰かにフラットファイルにデータをいちいち用意してもらってそれに基づいてエクセル・ＳＰＳＳで分析作業を行わざるをえなくなっている、要するにIRの生産性が低く、そこに日本のＩＲの停滞の一因がある。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">大学に現存するデータ量はとにかく膨大であり、何百、もしくはそれ以上のテーブルが存在する。従って、それを誰かに頼んでいちいちフラットファイルにデータを落としてもらってそこから分析を行うことは時間が掛かるし非効率である。ＳＱＬ言語を理解すれば、誰かに頼んでフラットファイルにデータを落としてもらう必要がなくなり、ＩＲが分析をデータベースソフトウェアを通じて行えるようになる。ＭＳアクセスであっても、ＭＳ ＳＱＬでも、ＭｙＳＱＬでも、オラクルでもなんでもいい。とにかく日本のＩＲ担当者はＳＱＬを学び、それをもとに分析するスキルを身に着けていくことが急務である。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ＳＱＬを学ぶメリットは膨大なデータを簡単に扱えるということだけではない。ＳＱＬを学べばおそらくＩＲ担当者は組織の縛りを飛び越えられる可能性も上がる。現時点では、多くの大学が、各部局のデータ担当者から、部局の所有するデータベースから抽出されたデータをＣＳＶファイルで受け取り、そうして集まったファイルをＩＴ担当者が組み合わせて串刺しデータを作り、ＩＲがそれを受け取ってデータ分析を行う。いわば、ひとつの分析を行うまでに、複数人の手を経ている。これでは非効率であるし、ファイル作成過程でエラーが出やすい。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ＩＲ担当者がＳＱＬを理解すれば、この中間の役割を担う人たちの作業が不必要になる。ＩＲが自らのＰＣにＳＱＬのソフトウェアをインストールして、そこから、ＯＤＢＣ(Open Database Connectivity)ツールを用いて、直接各部局のデータベースに読み取り専用で直接アクセスできるようにしてしまえばいい（もちろんそれなりのセキュリティを確保した上であるが）。そうすると、ＩＲ担当者は、各部局にあるデータベースの中にあるテーブルを全て閲覧できるようになる。そして、必要に応じて各データベースからＳＱＬに必要なデータを自分のＰＣにインストールされたＳＱＬソフトウェアに取り込み、ＳＱＬを駆使して分析を行う。アメリカではこのようにＳＱＬを中心に分析作業を行えるＩＲが最も重宝されているということは意外と知られていない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ＩＲは高等教育研究者と違って、一つのデータ分析に時間をかけることができない。いかに素早く、多領域に渡る一つ一つの分析を数多く効率よくこなしていくかが鍵である。それが故に、誰かにデータを用意してもらうのでは仕事にならないので、自らデータを手に入れて、分析用のファイルを素早く作るスキルを持つ必要がある。私も、過去ＩＲスタッフを採用した時、新しく入ったスタッフには何よりも最初にＳＱＬをとにかく最初に教えてきた。ＳＱＬを知ると知らないとでは、作業の効率性は雲泥の差であるからである。日本のＩＲ担当者もいち早く、ＳＱＬを学ぶことを薦めたい。知っていて決して損することのないスキルであると思う。</span></p>
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		<title>アメリカ大学事情　Vol.2　2013年4月15日「ムークス（MOOCs）とアメリカの大学　Part2　ムークスに対するアメリカの大学の現時点での対応」</title>
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		<pubDate>Sun, 14 Apr 2013 23:49:11 +0000</pubDate>
		<dc:creator>Takeshi Yanagiura</dc:creator>
				<category><![CDATA[アメリカ大学事情]]></category>

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		<description><![CDATA[前回の記事ではムークスの話を通して、まだまだムークスは初期段階であり、ビッグデータの活用が進むに連れて今後さらなる展開を行っていく、という私の予測を述べたが、今回は、ビッグデータからはひとまず離れて、現時点におけるムークスに対するアメリカの大学の対応を述べていく。 現時点で、大学がムークスに対応しなければならない懸案事項は基本的に2つのカテゴリーに分けられる。一つは、学生がムークスの授業を修了した際、それを自らの大学の単位として認めるか、という学生対応であり、そしてもうひとつは、ムークスの授業を受け持った教員をどのように評価するのか、という教員対応である。今回はこの２つの懸案事項に大学が現時点でどのように対処しているかを述べて行きたい。 まず、ムークスの授業を自らの大学の単位として認めるかどうかに関して、少しずつではあるが自らの大学の単位として認め始めている大学が出始めている。例えば、コロラド州立大学(Colorado State University)のグローバルキャンパス学部（オンライン学部）は、ムークスの代表的な企業の一つであるUdacityの授業の一つを卒業単位として認めた。学生はUdacityの授業を受けた後、大学で試験監督官付きのテストで基準点以上を超えれば単位として認められる。ただし、Udacityのすべての授業を認めているわけではなく、単位を認めている授業は現時点では僅かである。 また、ジョージア州立大学（Georgia State University）が今年の一月に、適正な学内の単位移行プロセスを経たならばムークスの授業を単位として認めるという方針を発表。また、オンラインプログラムの外注企業として、多くのアメリカの州立大学を顧客に持つアカデミック・パートナーシップ(Academic Partnership)もムークスのフォーマットで基礎レベルの授業を提供していくということを発表し、既に５，６の州立大学がアカデミック・パートナーシップを通してムークスの授業を開始し、単位を認める方向に動いている。 そしてさらに注目を集めたのが、アメリカの全米大学協会とも言える、The American Council on Education(ACE)が、今年初めに５つのムークスの授業を大学で単位認定する価値がある授業として正式に推薦したことである。もっとも、だからといって大学がそれらの単位を自動的に認めるというわけではない。最終的にどの授業が単位として認められるべきかは大学の決定であり、また認証評価団体（特に専攻レベルの認証評価団体）などの反応も考慮しなければならない。それでも、ACEのような全国協会や、DCにあるロビイスト団体、また財団などはムークスの動向に大きな興味を示しており、今回のACEの推薦はそれらの高等教育外部団体の興味の高さを表しているとも言える。 しかし、ムークスの授業を単位として認めることは現段階ではまだ早いのかもしれない。少なくとも全てのムークス授業を単位と認定するにはハードルが残されていると言える。最近The Chronicle of Higher Educationがムークスの授業を担当した教員に行ったアンケート調査によれば、ムークスを通して教えた自分の授業が、自分の大学の単位として認定されるにふさわしい授業であるかどうかという問いに対して、実に７２％がNoと答えている。個人的にも、それは前回の記事で述べた私のムークス体験と照らしあわせてもわからなくもない。確かに興味深い授業ではあったが、学費を払ってまで履修する授業かというと答えは否である。もっとも私がムークスの授業を履修したのは一度だけで、たまたまそういう授業にあたってしまっただけかもしれない。しかし最近ムークスの単位を認定し始めている大学も、実際の所、オンライン学部限定で認めているのがほとんどであり、メインとなるオフラインの学部でムークスの単位を認定しているところはまだ少ない。このデータは今後ムークスがさらなる展開をしていくために乗り越えなければならない課題を浮き彫りにしているといえる。 ムークスで提供される授業を正式に単位として認める流れが今後強まっていくかどうかはまだ定かではないが、一方で世間的にそうすべきだという期待値は高いといってよい。その大きな理由の一つは近年増加の一途を辿る学費の増加と関係している。アメリカの学費は毎年インフレーションを大幅に超える速度で毎年増加しており、一つの社会問題となっている。以下の表は大学種別の全米年間平均学費を今年度と10年前をインフレ調整済みの額で比較しているが、私立大学は２６％、州立大学は６６％、そしてコミュニティカレッジは４７％の伸び率で、異常とも言える速度で学費が軒並み急上昇していることがわかる。 表：大学種別、全米平均学費、２００２－０３年度及び2012-13年度（インフレーション調整済み） 出典：CollegeBoard, Trends in Higher Education, Table 2B, “Average Tuition and Fee and Room and Board Charges in 2012 Dollars, 2002-03 to 2012-13” もっとも、アメリカの場合は給付型の奨学金が豊富であり、多くの学生は何らかの形で奨学金を受取り、額面通りの額を支払っている学生は留学生を除けば少数である。しかし近年の学費上昇の流れは奨学金の増加額を大幅に超えているため（特に政府負担の奨学金は、学費と違いインフレとともに上昇しない場合がほとんである）、奨学金受給者でも負担が毎年目に見える形で増加している。ゆえに学生やその両親、及びメディアの間では、そこまで高い学費を払ってまで大学、特に私立大学、に行かなければならないのかという声も出てきているのも事実である。ただ、現実としては大学を出ていなければ平均的な給料を貰える職に就くことができないため、大学に進学しないという選択肢は残されていないといってよい。 そのような文脈で登場したのがムークスである。学生の立場から言えば、ムークスで単位が認められるようになれば、それは支払う学費額の減少を意味し（アメリカは日本と違って一部の私立を除いて1単位ごとで学費が課金される）、しかもそれが有名大学の教員によって教えられた授業となれば、一石二鳥である。また大学側にとっても、学費上昇に対する社会からの批判をかわすためにも、ムークスに乗り出すことは必ずしも分の悪い話でもない。さらにムークスを提供することによって、自らの大学のコスト削減にも繋がる可能性もあり、その結果実際に学費を抑えることができるようになるかもしれない。そして企業からみても、玉石混交状態ともいえるアメリカの大学の学位よりも、著名な教授のお墨付きの学生の方が安心して採用できるというメリットがある。その3者の利益が交差する点に位置するのがムークスであり、それが多くの高等教育関係者の注目を集めている大きな理由といえる。 ムークスに対するもうひとつの懸案事項はムークスの授業を担当する教員への対応がまだ定まっていないということである。ムークスがここまで注目を集めている以上、大学にとってムークスの授業を担当している教員がいるということは、優秀な教員がいるという一つの大学宣伝にもなる。また世間的にも時代の最先端に位置する大学というポジティブなイメージを（現時点では）世界中に与えることにもなる。そして教員にとっても、自らの名前を世界中に広めるという宣伝効果もあるので、金銭的報酬がなくとも、それなりの利益はある。しかし、自分の大学の教員が実際にムークスの授業を教えることとなった場合、誰がそのコストを負担するのか、そしてそれはどのように評価すべきなのか、果たしてムークスによって得られる利益と費用はバランスがとれているのか等、大学は考慮する必要があるが、それに対する答えはまだ出ていない。大学としてはどこまでムークスへの参加を許容すべきなのか線引きが難しいところであるが、今後ムークスがより広がっていくためには、大学及びムークス企業との間で教員対応策を考えていく必要があるといえる。 たしかに教員がボランティアでムークスに参加している限り、大学とって費用は表面的には０である。しかし、ムークスの授業を受け持つ教員はある程度の労力をその授業に注がなければならない。そこには時間×労力＝コストがある。時間外労働もおそらく必要となるだろうし、そして、それが本来なさねばならない業務に影響が出ないとも限らない。Chronicle of Higher Educationによれば、ムークス一つの授業を作成するのにかかる時間は平均で100時間を超え、授業が始まってからは週に8から10時間を費やしているとのことである。すなわちムークスで授業を提供するということは、自大学の教員が学外の学生を教育するということであり、言い換えれば、他の大学の学生に教えている分のコストを自らの大学が負担しているということになる。そのコストは財務諸表には現れることのない、いわば潜在的コストともいえるが、そのコストを理解した上で、ムークスで授業を提供する教員へどのようなサポートを提供するのか、そしてそのサポート費用は、ムークスによって得られる利益を上回っているのかそれとも下回っているのか、ということを大学経営者は知る必要がある。 以上の懸案事項を鑑みた時、このムークスの流れを新世代の教育方法と手放しで称賛するにはまだ時期尚早といえる。今は何かと脚光を浴びて、流行語的存在ともなっているムークスだが、今はまだ初期段階であり、今後どのような展開を見せるかは現時点では予測が難しい。たまにメディアなどで、ムークスで授業を提供して行かなければ時代の最先端に遅れている大学として烙印を押されかねないと主張する記事をたまに目にするが、ムークス企業自体がどこに行こうとしているか模索中の現段階では、危機感を煽り過ぎているきらいがしないでもない。従ってありふれた言い方になるが、各大学は今後のムークスの発展に注目しつつ、ムークスの利点を上手に利用し、自らのビジネスモデルの一部に組み込んでいく、というアプローチが現実的ではないかと思う。そういう意味では、ムークスの出方がまだ流動的かつ不確定である今、アメリカの大学は今一度自らのビジネスモデル及び長期計画を再度見なおして足元を固めるべき時であるのかも知れない。 最後に、時折新聞の記事などで、ムークスはいずれ既存の大学を淘汰していく可能性がある、という論調を目にすることがあるが、それは行き過ぎた議論であると言わざるを得ない。現時点では、前述したようにムークスはまだまだ高等教育のメインストリートに参入してくる為に乗り越えなければならない課題が山積している。ムークスはまだまだ初期段階であり、大学側もそんな簡単にムークスに取って代わられるほど脆弱な競争相手でもない。また、大学には大学でしか経験できないものもあり、オンラインだけではどうしてもカバーできないものもある。また学生のニーズも多様化しており、オンラインを好む学生もいれば、やはり教員と直接顔をあわせて授業を受けたいという学生もいる。その学生のニーズの多様化という点を考えると、将来的にはムークスと大学が連携しあって、お互いを補完しあっていくという形に落ち着いていく、というのが私を初め、多くの専門家の予想である。個人的には、高等教育のコスト高騰は行き過ぎであると思っているので、ムークスが今後アメリカ高等教育のコストを抑えていく働きをしていって欲しいと期待している。 参考記事 The New [...]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p><span style="font-size: small;">前回の記事ではムークスの話を通して、まだまだムークスは初期段階であり、ビッグデータの活用が進むに連れて今後さらなる展開を行っていく、という私の予測を述べたが、今回は、ビッグデータからはひとまず離れて、現時点におけるムークスに対するアメリカの大学の対応を述べていく。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">現時点で、大学がムークスに対応しなければならない懸案事項は基本的に2つのカテゴリーに分けられる。一つは、学生がムークスの授業を修了した際、それを自らの大学の単位として認めるか、という学生対応であり、そしてもうひとつは、ムークスの授業を受け持った教員をどのように評価するのか、という教員対応である。今回はこの２つの懸案事項に大学が現時点でどのように対処しているかを述べて行きたい。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">まず、ムークスの授業を自らの大学の単位として認めるかどうかに関して、少しずつではあるが自らの大学の単位として認め始めている大学が出始めている。例えば、コロラド州立大学(Colorado State University)のグローバルキャンパス学部（オンライン学部）は、ムークスの代表的な企業の一つである<a href="http://www.udacity.com/">Udacity</a>の授業の一つを卒業単位として認めた。学生はUdacityの授業を受けた後、大学で試験監督官付きのテストで基準点以上を超えれば単位として認められる。ただし、Udacityのすべての授業を認めているわけではなく、単位を認めている授業は現時点では僅かである。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">また、ジョージア州立大学（Georgia State University）が今年の一月に、適正な学内の単位移行プロセスを経たならばムークスの授業を単位として認めるという方針を発表。また、オンラインプログラムの外注企業として、多くのアメリカの州立大学を顧客に持つアカデミック・パートナーシップ(Academic Partnership)もムークスのフォーマットで基礎レベルの授業を提供していくということを発表し、既に５，６の州立大学がアカデミック・パートナーシップを通してムークスの授業を開始し、単位を認める方向に動いている。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">そしてさらに注目を集めたのが、アメリカの全米大学協会とも言える、<a href="http://www.acenet.edu/Pages/default.aspx">The American Council on Education</a>(ACE)が、今年初めに５つのムークスの授業を大学で単位認定する価値がある授業として正式に推薦したことである。もっとも、だからといって大学がそれらの単位を自動的に認めるというわけではない。最終的にどの授業が単位として認められるべきかは大学の決定であり、また認証評価団体（特に専攻レベルの認証評価団体）などの反応も考慮しなければならない。それでも、ACEのような全国協会や、DCにあるロビイスト団体、また財団などはムークスの動向に大きな興味を示しており、今回のACEの推薦はそれらの高等教育外部団体の興味の高さを表しているとも言える。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">しかし、ムークスの授業を単位として認めることは現段階ではまだ早いのかもしれない。少なくとも全てのムークス授業を単位と認定するにはハードルが残されていると言える。最近The Chronicle of Higher Educationがムークスの授業を担当した教員に行ったアンケート調査によれば、ムークスを通して教えた自分の授業が、自分の大学の単位として認定されるにふさわしい授業であるかどうかという問いに対して、実に７２％がNoと答えている。個人的にも、それは前回の記事で述べた私のムークス体験と照らしあわせてもわからなくもない。確かに興味深い授業ではあったが、学費を払ってまで履修する授業かというと答えは否である。もっとも私がムークスの授業を履修したのは一度だけで、たまたまそういう授業にあたってしまっただけかもしれない。しかし最近ムークスの単位を認定し始めている大学も、実際の所、オンライン学部限定で認めているのがほとんどであり、メインとなるオフラインの学部でムークスの単位を認定しているところはまだ少ない。このデータは今後ムークスがさらなる展開をしていくために乗り越えなければならない課題を浮き彫りにしているといえる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ムークスで提供される授業を正式に単位として認める流れが今後強まっていくかどうかはまだ定かではないが、一方で世間的にそうすべきだという期待値は高いといってよい。その大きな理由の一つは近年増加の一途を辿る学費の増加と関係している。アメリカの学費は毎年インフレーションを大幅に超える速度で毎年増加しており、一つの社会問題となっている。以下の表は大学種別の全米年間平均学費を今年度と10年前をインフレ調整済みの額で比較しているが、私立大学は２６％、州立大学は６６％、そしてコミュニティカレッジは４７％の伸び率で、異常とも言える速度で学費が軒並み急上昇していることがわかる。</span></p>
<p align="center"><span style="font-size: small;">表：大学種別、全米平均学費、２００２－０３年度及び2012-13年度（インフレーション調整済み）</span></p>
<p align="center"><a href="http://www.postsecondaryanalytics.com/wp-content/uploads/2013/04/Blog2TablePic.png"><img class="alignnone size-medium wp-image-2381" alt="Blog2TablePic" src="http://www.postsecondaryanalytics.com/wp-content/uploads/2013/04/Blog2TablePic-300x89.png" width="300" height="89" /></a></p>
<p align="center"><span style="font-size: small;">出典：CollegeBoard, Trends in Higher Education, Table 2B, “Average Tuition and Fee and Room and Board Charges in 2012 Dollars, 2002-03 to 2012-13”</span></p>
<p><span style="font-size: small;">もっとも、アメリカの場合は給付型の奨学金が豊富であり、多くの学生は何らかの形で奨学金を受取り、額面通りの額を支払っている学生は留学生を除けば少数である。しかし近年の学費上昇の流れは奨学金の増加額を大幅に超えているため（特に政府負担の奨学金は、学費と違いインフレとともに上昇しない場合がほとんである）、奨学金受給者でも負担が毎年目に見える形で増加している。ゆえに学生やその両親、及びメディアの間では、そこまで高い学費を払ってまで大学、特に私立大学、に行かなければならないのかという声も出てきているのも事実である。ただ、現実としては大学を出ていなければ平均的な給料を貰える職に就くことができないため、大学に進学しないという選択肢は残されていないといってよい。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">そのような文脈で登場したのがムークスである。学生の立場から言えば、ムークスで単位が認められるようになれば、それは支払う学費額の減少を意味し（アメリカは日本と違って一部の私立を除いて1単位ごとで学費が課金される）、しかもそれが有名大学の教員によって教えられた授業となれば、一石二鳥である。また大学側にとっても、学費上昇に対する社会からの批判をかわすためにも、ムークスに乗り出すことは必ずしも分の悪い話でもない。さらにムークスを提供することによって、自らの大学のコスト削減にも繋がる可能性もあり、その結果実際に学費を抑えることができるようになるかもしれない。そして企業からみても、玉石混交状態ともいえるアメリカの大学の学位よりも、著名な教授のお墨付きの学生の方が安心して採用できるというメリットがある。その3者の利益が交差する点に位置するのがムークスであり、それが多くの高等教育関係者の注目を集めている大きな理由といえる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ムークスに対するもうひとつの懸案事項はムークスの授業を担当する教員への対応がまだ定まっていないということである。ムークスがここまで注目を集めている以上、大学にとってムークスの授業を担当している教員がいるということは、優秀な教員がいるという一つの大学宣伝にもなる。また世間的にも時代の最先端に位置する大学というポジティブなイメージを（現時点では）世界中に与えることにもなる。そして教員にとっても、自らの名前を世界中に広めるという宣伝効果もあるので、金銭的報酬がなくとも、それなりの利益はある。しかし、自分の大学の教員が実際にムークスの授業を教えることとなった場合、誰がそのコストを負担するのか、そしてそれはどのように評価すべきなのか、果たしてムークスによって得られる利益と費用はバランスがとれているのか等、大学は考慮する必要があるが、それに対する答えはまだ出ていない。大学としてはどこまでムークスへの参加を許容すべきなのか線引きが難しいところであるが、今後ムークスがより広がっていくためには、大学及びムークス企業との間で教員対応策を考えていく必要があるといえる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">たしかに教員がボランティアでムークスに参加している限り、大学とって費用は表面的には０である。しかし、ムークスの授業を受け持つ教員はある程度の労力をその授業に注がなければならない。そこには時間×労力＝コストがある。時間外労働もおそらく必要となるだろうし、そして、それが本来なさねばならない業務に影響が出ないとも限らない。Chronicle of Higher Educationによれば、ムークス一つの授業を作成するのにかかる時間は平均で100時間を超え、授業が始まってからは週に8から10時間を費やしているとのことである。すなわちムークスで授業を提供するということは、自大学の教員が学外の学生を教育するということであり、言い換えれば、他の大学の学生に教えている分のコストを自らの大学が負担しているということになる。そのコストは財務諸表には現れることのない、いわば潜在的コストともいえるが、そのコストを理解した上で、ムークスで授業を提供する教員へどのようなサポートを提供するのか、そしてそのサポート費用は、ムークスによって得られる利益を上回っているのかそれとも下回っているのか、ということを大学経営者は知る必要がある。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">以上の懸案事項を鑑みた時、このムークスの流れを新世代の教育方法と手放しで称賛するにはまだ時期尚早といえる。今は何かと脚光を浴びて、流行語的存在ともなっているムークスだが、今はまだ初期段階であり、今後どのような展開を見せるかは現時点では予測が難しい。たまにメディアなどで、ムークスで授業を提供して行かなければ時代の最先端に遅れている大学として烙印を押されかねないと主張する記事をたまに目にするが、ムークス企業自体がどこに行こうとしているか模索中の現段階では、危機感を煽り過ぎているきらいがしないでもない。従ってありふれた言い方になるが、各大学は今後のムークスの発展に注目しつつ、ムークスの利点を上手に利用し、自らのビジネスモデルの一部に組み込んでいく、というアプローチが現実的ではないかと思う。そういう意味では、ムークスの出方がまだ流動的かつ不確定である今、アメリカの大学は今一度自らのビジネスモデル及び長期計画を再度見なおして足元を固めるべき時であるのかも知れない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">最後に、時折新聞の記事などで、ムークスはいずれ既存の大学を淘汰していく可能性がある、という論調を目にすることがあるが、それは行き過ぎた議論であると言わざるを得ない。現時点では、前述したようにムークスはまだまだ高等教育のメインストリートに参入してくる為に乗り越えなければならない課題が山積している。ムークスはまだまだ初期段階であり、大学側もそんな簡単にムークスに取って代わられるほど脆弱な競争相手でもない。また、大学には大学でしか経験できないものもあり、オンラインだけではどうしてもカバーできないものもある。また学生のニーズも多様化しており、オンラインを好む学生もいれば、やはり教員と直接顔をあわせて授業を受けたいという学生もいる。その学生のニーズの多様化という点を考えると、将来的にはムークスと大学が連携しあって、お互いを補完しあっていくという形に落ち着いていく、というのが私を初め、多くの専門家の予想である。個人的には、高等教育のコスト高騰は行き過ぎであると思っているので、ムークスが今後アメリカ高等教育のコストを抑えていく働きをしていって欲しいと期待している。</span></p>
<p><span style="font-size: small;"><b><span style="text-decoration: underline;">参考記事</span></b></span></p>
<p><span style="font-size: small;">The New York Times. “Colorado State to Offer Credits for Online Class.” September 6, 2012.</span><br />
<span style="font-size: small;"><a href="http://www.nytimes.com/2012/09/07/education/colorado-state-to-offer-credits-for-online-class.html">http://www.nytimes.com/2012/09/07/education/colorado-state-to-offer-credits-for-online-class.html</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">The Chronicle of Higher Education. “The Professors Who Make the MOOCs.” March 18, 2013.<br />
<span style="font-size: small;"><a href="http://chronicle.com/article/The-Professors-Behind-the-MOOC/137905/#id=overview">http://chronicle.com/article/The-Professors-Behind-the-MOOC/137905/#id=overview</a></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">The Evolllution. “MOOCs Making Strides Toward Credit.” September 7, 2012.<i> </i><br />
<span style="font-size: small;"><a href="http://www.evolllution.com/friday-links/moocs-making-strides-toward-credit/">http://www.evolllution.com/friday-links/moocs-making-strides-toward-credit/</a></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">American Council on Education Recommends 5 MOOCs for Credit　February 7, 2013<br />
<span style="font-size: small;"><a href="http://chronicle.com/article/American-Council-on-Education/137155/">http://chronicle.com/article/American-Council-on-Education/137155/</a></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">Inside Higher Ed. “MOOCs for Credit” January 23, 2013.<br />
<span style="font-size: small;"><a href="http://www.insidehighered.com/news/2013/01/23/public-universities-move-offer-moocs-credit">http://www.insidehighered.com/news/2013/01/23/public-universities-move-offer-moocs-credit</a></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">Georgia State University, Public Relations and Marketing Communications. “Georgia State University Takes Major Step Toward Developing Online Course Learning Option” Jan 22, 2013.<br />
<span style="font-size: small;"><a href="http://www.gsu.edu/news/63587.html">http://www.gsu.edu/news/63587.html</a></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">The Washington Post. “MOOCs take a step toward college credit.”<br />
<span style="font-size: small;"><a href="http://articles.washingtonpost.com/2013-02-07/local/36958661_1_moocs-coursera-college-credit">http://articles.washingtonpost.com/2013-02-07/local/36958661_1_moocs-coursera-college-credit</a></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">Academic Partneship. MOOC2Degree Press Release. “Academic Partnership Launches MOOC2Degree Initiative”. January 2, 2013. <a href="http://www.mooc2degree.com/press.php#.UP-uV-i7AlI">http://www.mooc2degree.com/press.php#.UP-uV-i7AlI</a><br />
<span style="font-size: small;">The New York Times. “Degree of Influence?” March 16, 2011. <a href="http://opinionator.blogs.nytimes.com/2011/03/16/degrees-of-influence/">http://opinionator.blogs.nytimes.com/2011/03/16/degrees-of-influence/</a></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">The Washington Post. “College is still a great investment. But it’s getting worse.” Sep 11, 2012.<br />
<span style="font-size: small;"><a href="http://www.washingtonpost.com/blogs/wonkblog/wp/2012/09/11/college-is-still-a-great-investment-but-its-getting-worse/">http://www.washingtonpost.com/blogs/wonkblog/wp/2012/09/11/college-is-still-a-great-investment-but-its-getting-worse/</a></span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">The Chronicle of Higher Education. “A First for Udacity: a U.S. University Will Accept Transfer Credit for One of Its Courses.” Sep 6, 2012.<br />
<span style="font-size: small;"><a href="http://chronicle.com/article/A-First-for-Udacity-Transfer/134162/">http://chronicle.com/article/A-First-for-Udacity-Transfer/134162/</a></span></span></p>
]]></content:encoded>
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		<title>アメリカ大学事情　Vol.1　2013年4月8日　「MOOCs（ムークス）とアメリカの大学　Part 1　ビッグデータ」</title>
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		<pubDate>Tue, 02 Apr 2013 16:59:18 +0000</pubDate>
		<dc:creator>Takeshi Yanagiura</dc:creator>
				<category><![CDATA[アメリカ大学事情]]></category>

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		<description><![CDATA[この度、「アメリカの大学事情」と銘打ってアメリカ高等教育の最新事情を発信していくことになり、その第一回目の内容を何にするかしばらく考えたが、記念すべき（？）第一回目のデーマは今アメリカの大学だけでなく日本でもにわかに注目を集めはじめているムークスをとりあげ、それが今後アメリカの大学に与える影響を、ムークとデータという観点から考えてみたいと思う。 MOOCs（ムークス）とはMassive Open Online Courses の略語を複数形にしたもので、大学や大学院の授業をインターネットを通して無料で世界中に配信する、近年アメリカの高等教育界で脚光を浴びている教育ビジネスである。日本でも東大がCoursera に授業を提供すると先ごろ発表されたように、アメリカだけでなく、世界中にムークスの流れは広まりつつある。もともとのムークスの始まりは、大学の授業を録画してそれをYoutubeやiTuneなどを通して公開するといったことからであったが、技術の確信にともなってそれが発展し、よりユーザー（生徒）との相互交流を可能にしたり、一つのコースに世界中から１０万人から１５万人の学生が履修するといった現象を起こし、ムークスは新しい高等教育の一つの形として注目を浴びている。現在アメリカ高等教育関連のメディアでは、ムークスという言葉を見ない日はないといってよい。 ムークスが注目を浴びている理由は、世間的にはまずひとつに無料であるということ、そしてその多くの授業が一流大学で教鞭をとっている教員によって教えられるということがあげられる。その分野のトップの教授に直接授業を受けてみたいという願望は誰しもが持っており、その願望をインターネットを通して技術的に可能にするだけでなく、しかもそれを無料で提供するということによってアメリカだけでなく世界中の人々に幅広くアクセスできるようにしたことが、注目を集めている一つの理由である。 しかし、当然ながら、それだけがここまで注目を集めている理由ではない。インターネットで授業を閲覧するだけでは、例えば随分前からMITなどが行なってきたことであり、とりたてて珍しいことではない。ムークスがそれらの初期段階のオンラインコースと比べてユニークなのは、今までのように授業をただインターネットで流すだけでなく、教員やその他の大多数の学生、それも今までとは桁の違う学生数、との相互のコミュ二ケーションを可能にしたことである。 かくいう私もムークの授業を最近履修していた。Courseraというスタンフォードの元教授が起こしたムーク系企業によって提供されたこのコースは、Johns Hopkins Universityの教授が担当した授業であったが、確かに世界中から数多くの学生が履修していた。このコースは週一の授業が約２ヶ月にわたって行われ、毎週講義ビデオが会員制（無料）のウェブサイトにアップされる。毎週宿題が課され、受講者は期日までに宿題を提出しなければならない。 実際に授業に参加してみて、興味深いと感じたことが２つある。一つは、質問がある場合、掲示板にそれを書き込むのだが、その他の学生で答えを知っている人が回答するといったような、Yahoo！の知恵袋のようなシステムで成り立っている。質問も書き込んだ人が多い質問が一番最初に来るようにプログラムされており、他の学生の学習状況をある程度理解することができる。また、教員も質問の掲示板を見て重要だと思ったことは次の授業で説明したり、掲示板に書き込むなどして学生とのコミュニケーションを図る。もう一つは、近隣に住んでいる学生同士がオフラインで勉強会を開催し、実際の学習者のコミュニティを形成しているということである。私はワシントンDCエリアに住んでいるが、私の地域でもオフラインでの勉強会は行われており（参加はしなかったが）、似た興味を持つ人々をネットワークする機会も提供しているという点は非常に興味深かった。 しかし、それだけではなぜムークスがそこまで注目を集めているかを完全には説明していない。正直なところ、私が受講した授業が、自分の履修した授業にのみ関して言えば、悪くはないが取り立てて素晴らしいとも思わなかった。履修学生同士のコミュニケーションならば、今までも数多くのオンライン大学が長年に渡って行ってきたことである。ただ、ウェブサイトの使い勝手が良かったというのと、他学生とのコミュニケーションが簡単に取れるというのは確かに興味深かった。しかし、受講者としての観点から判断すると、今までに存在しているオンラインの授業と、正直なところあまり違いはないと思う。 それではなぜ、ムークスが高等教育だけにとどまらず社会的な注目を集めているのか？それはムークスが現時点で行っていることそのものよりも、その今後秘めた可能性に注目している、といったほうが正しいといえる。実際のところ、ムークスはその多くがビジネスモデルが確立しているわけでもなく、現時点では一部の投資家から供給された資金によってほぼ運営されている。Educauseがムークスにおいて今後注目すべき点として、ビジネスモデルの展開をその一つの理由に上げ、いくつか考えられるビジネスモデルの例をリストアップしていたが、まだまだ試運転段階であり、将来どのような形で収益を上げていくのかはまだはっきりとしていない。 ただ、現在一つの興味深いビジネスモデルとして実行されているのが、人材紹介システムである。ムーク企業が、人材紹介の役割を果たし、企業に優秀な人材を紹介して、その紹介料を受け取ることによって収益を上げるというモデルである。そのロジックは実にわかりやすい。彼らの考え方はこうである。例えばある授業に世界中から１０万人の授業を受けたとしよう。おそらくその多くは、興味本位で授業を履修しているだけの学生であろう。多くの学生は多分宿題も提出しないし、そもそも毎週の授業に参加しているかどうかも怪しいものである。しかし、その一方で１０万人くらいのうち、おそらく１００人くらい、割合に直せば、０．１％くらいは素晴らしく優秀な生徒であるということも十分統計的に考えられる。実際に授業に課される宿題は、（私の履修した授業では）実用的であり、この宿題を解くことが出来る人はおそらく仕事で有用なスキルをもっているであろうと予想される。このトップレベルにいる学生を見定め、企業に紹介し、その紹介料で収入を稼ぐというのが今ひとつのビジネスモデルになっている。実際、企業でも従業員にムークの単位を取れば昇給などのメリットと関連付けるなどの動きも起こっており、それがまたムークスの学生数の増加の一つの理由になっている。しかし、ムークス側からすれば、これだけでは満足できる収入になるわけでもなく、実際のところもっと集金力のあるビジネスモデルを模索しているのが現段階といえる。 そんな先行きの不透明なムークスであるのにも関わらず、なお注目を集める理由は何であろうか？それはなんといってもその保持する圧倒的なデータ量である。例えば、数ヶ月前にはCourseraが学生総数２００万人を突破したということが発表された。そしてCourseraは、ただ２００万人の学生の基本的な属性のデータを集めているだけではない。学生が受講しているコースのページにアクセスした後のありとあらゆる情報、何時にログインし、どのサイトをどれくらい閲覧し、コミュニティにどのように参加したのか、等のデータをリアルタイムで集積した、いわゆる「ビッグデータ」を保持し、分析活用している。これがムークの根幹であり、投資家を引き寄せる一番の理由である。 「ビッグデータ」とは、アメリカ高等教育界においても近年様々な場所で聞かれるようになった言葉であるが、簡単に言えば、リアルタイムで集積されていく巨大なデータベースのことである。ビッグデータはそのあまりの巨大さのため、何百、何千とのサーバーを必要とする。例えば、グーグルは検索する人の傾向に関するデータをリアルタイムで集積していき、フェイスブックはユーザーの更新情報、及び書き込みに関することや、誰がどのような広告をクリックしたかなどありとあらゆるユーザーの行動に関するデータをリアルタイムで集積していく、それが一般的にいわれるビッグデータである。 ビッグデータは、そのデータの量に物を言わせ、今まで思いもしなかった発見を導く可能性がある。グーグルの例を使えば、例えば１００万人分のデータのうち、１万人のユーザーが朝７時にグーグルで何かを検索した後経済関連の本の広告をクリックした（実際どうかは知らないが）という関連性を発見したとする。これは１００万人規模のデータだからこそ浮かび上がる傾向であり、ビッグデータだからこそわかりうる発見である。近年データの重要性がますます高まっていくに連れて、ビッグデータの価値の注目度が急上昇してきているのが近年の流れである。 このビッグデータの波が大学業界にもいよいよ波及してきたということにこのムークスの持つ重要な意義があり、Courseraおよび他のムーク ス企業が社会的な注目を集めている理由がある。何百万人ものリアルタイム・データを集めることによってもたらされる効果は、今まではわからなかった新たな教育方法を生み出す可能性がある。現在のアメリカの大学機関で、学生のデータをこのレベルで集めている大学はほとんどない。また、そのビッグデータを保持するだけのキャパシティもないところがほとんどである。現時点で通常の大学が保持している学習に関するデータは、学生の大学・高校時代の成績、教員の給与、たまに学生生活アンケートのデータくらいであって、年に数回更新される程度のデータである。それでもないよりはマシだが、やはりそのデータから分かることは、特に学習状況に関しては、ほんのわずかでしかない。その点、ムーク系企業が集めるデータは学習状況に関して、情報量が圧倒的に異なるだけでなく、伝統的に分析に使われてきたデータとは全く質が異なるデータである。そこから明らかになることは、これまでの教育の常識を覆すような発見もあるかもしれないし、そこからまたいくつものビジネスチャンスが生まれてくるに違いない、そのような期待がムーク系企業を取り巻く人達にはある。 実際に、ビッグデータを利用して、収益を上げる教育ビジネスモデルを打ち出した企業も既に出てきている。最近脚光を浴びているのは、ニューヨークに本拠地を置く「Knewton」（ニュートン）というムーク系企業である。ニュートンは最近アリゾナ州立大学と巨額の契約を結び大学業界内で一躍その名を知られる存在となった。ニュートンは、アメリカテスト会社大手のピアソンと協力し、独自のオンラインコースソフトウェアを提供している。そのソフトウェアの詳しい内容はここでは省くが、簡単にいえば、教員にひとりひとりの学生がどこを理解し、どこでつまずいているかをリアルタイムで通知するシステムである。例えば数学の授業である学生が微分のある公式がわかっていない、そういったことがリアルタイムで理解をすることができる。また学生にもこのソフトウェアはメリットが有る。例の微分の公式が理解できていない学生に、このソフトウェアは、なぜ公式が理解できないか、そのいくつかの理由を提供し、その公式を理解する上での基礎知識をその学生が身につけているかどうかを確認させる。そして学生が理解していない基礎知識があれば、いったん学生は微分の公式を学ぶことをひとまずやめ、その前の段階のモジュールに導かれる、といったようなシステムである。この学生一人ひとりの理解度に合わせて学習内容を変えていくことを英語でAdaptive Learningというが、これらの意思決定の根拠となるのは、ピアソンの過去に集積されたデータに基づいたカリキュラムである。ニュートンはそれに現在の履修学生のデータをリアルタイムでどんどん集積させ、このピアソンのカリキュラムをクライアントの大学のために随時改善していくというシステムを構築した。現時点では履修学生一人当たり１００ドルをアリゾナ州立大学は支払う契約内容になっているということだが、この価格は多くの大学にとっては、まだまだハードルが高いといえる。とはいえ、授業改善はアメリカ高等教育の重要テーマの一つである。ゆえに、このモデルが今後どこまで他の大学へと広まっていくか目が離せない。 ところで、このビッグデータ、利点ばかりを強調してきたが、そればかりでもない。逆説的になるが、データがあまりにも膨大すぎて分析をしようにもどこからどうやって手を付ければいいかがわからない、という課題もある。教育研究者ならだれでも思い当たる節があると思うが、データが大量にあったとしても分析に使えるデータは実は意外と少なかったりするものである。フェイスブックがあそこまで大量のデータを集積しているのにもかかわらずそのデータを広告収入増に使い切れていないということと同じ問題といえなくもない。しかし、このような研究者の常識はこれらの企業には関係ないといってよい。彼らは大量のプログラマーをグーグルやその他有力企業から引き抜き、彼らに巨大なデータベースを日々データマイニングさせて分析作業を行い、新たな情報を生み出す努力を行なっている。この数に物を言わせた半ば強引とも言える分析アプローチがどのような結果を生み出していくのか非常に興味深いところである。 まだまだムークスは初期段階であり、今後の展開方法はまだ明らかにはなっていないが、大学関係者はインターネット上で無料でエリート大学の授業が履修できるという表面的な部分だけ見ていると、もっと根底にある大きな流れを見失うことになりかねない。一番の重要なポイントはビッグデータであり、それが大学業界にとうとう参入してきたという事実である。ビッグデータが今後どのように大学業界で展開していくのかは現時点では予測が難しいが、ますますその重要性は高まっていくことだけは間違いないといえる。（次回に続く） 参考記事 Inside Higher Ed. “How will MOOCs Make Money?” 2012-06-11. http://www.insidehighered.com/news/2012/06/11/experts-speculate-possible-business-models-mooc-providers Inside Higher Ed. “MOOCs Assesed, Modestly.” 2013-01-14. http://www.insidehighered.com/news/2013/01/14/assessing-moocs-higheredtech-conference Inside Higher Ed. “The New Intelligence.” 2013-01-25. http://www.insidehighered.com/news/2013/01/25/arizona-st-and-knewtons-grand-experiment-adaptive-learning Inside Higher Ed. [...]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p><span style="font-size: small;">この度、「アメリカの大学事情」と銘打ってアメリカ高等教育の最新事情を発信していくことになり、その第一回目の内容を何にするかしばらく考えたが、記念すべき（？）第一回目のデーマは今アメリカの大学だけでなく日本でもにわかに注目を集めはじめているムークスをとりあげ、それが今後アメリカの大学に与える影響を、ムークとデータという観点から考えてみたいと思う。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">MOOCs（ムークス）とは<b><span style="text-decoration: underline;">M</span></b>assive <b><span style="text-decoration: underline;">O</span></b>pen <b><span style="text-decoration: underline;">O</span></b>nline <b><span style="text-decoration: underline;">C</span></b>ourses の略語を複数形にしたもので、大学や大学院の授業をインターネットを通して無料で世界中に配信する、近年アメリカの高等教育界で脚光を浴びている教育ビジネスである。日本でも東大が<a href="http://www.coursera.org">Coursera</a> に授業を提供すると先ごろ発表されたように、アメリカだけでなく、世界中にムークスの流れは広まりつつある。もともとのムークスの始まりは、大学の授業を録画してそれをYoutubeやiTuneなどを通して公開するといったことからであったが、技術の確信にともなってそれが発展し、よりユーザー（生徒）との相互交流を可能にしたり、一つのコースに世界中から１０万人から１５万人の学生が履修するといった現象を起こし、ムークスは新しい高等教育の一つの形として注目を浴びている。現在アメリカ高等教育関連のメディアでは、ムークスという言葉を見ない日はないといってよい。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ムークスが注目を浴びている理由は、世間的にはまずひとつに無料であるということ、そしてその多くの授業が一流大学で教鞭をとっている教員によって教えられるということがあげられる。その分野のトップの教授に直接授業を受けてみたいという願望は誰しもが持っており、その願望をインターネットを通して技術的に可能にするだけでなく、しかもそれを無料で提供するということによってアメリカだけでなく世界中の人々に幅広くアクセスできるようにしたことが、注目を集めている一つの理由である。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">しかし、当然ながら、それだけがここまで注目を集めている理由ではない。インターネットで授業を閲覧するだけでは、例えば随分前からMITなどが行なってきたことであり、とりたてて珍しいことではない。ムークスがそれらの初期段階のオンラインコースと比べてユニークなのは、今までのように授業をただインターネットで流すだけでなく、教員やその他の大多数の学生、それも今までとは桁の違う学生数、との相互のコミュ二ケーションを可能にしたことである。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">かくいう私もムークの授業を最近履修していた。Courseraというスタンフォードの元教授が起こしたムーク系企業によって提供されたこのコースは、Johns Hopkins Universityの教授が担当した授業であったが、確かに世界中から数多くの学生が履修していた。このコースは週一の授業が約２ヶ月にわたって行われ、毎週講義ビデオが会員制（無料）のウェブサイトにアップされる。毎週宿題が課され、受講者は期日までに宿題を提出しなければならない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">実際に授業に参加してみて、興味深いと感じたことが２つある。一つは、質問がある場合、掲示板にそれを書き込むのだが、その他の学生で答えを知っている人が回答するといったような、Yahoo！の知恵袋のようなシステムで成り立っている。質問も書き込んだ人が多い質問が一番最初に来るようにプログラムされており、他の学生の学習状況をある程度理解することができる。また、教員も質問の掲示板を見て重要だと思ったことは次の授業で説明したり、掲示板に書き込むなどして学生とのコミュニケーションを図る。もう一つは、近隣に住んでいる学生同士がオフラインで勉強会を開催し、実際の学習者のコミュニティを形成しているということである。私はワシントンDCエリアに住んでいるが、私の地域でもオフラインでの勉強会は行われており（参加はしなかったが）、似た興味を持つ人々をネットワークする機会も提供しているという点は非常に興味深かった。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">しかし、それだけではなぜムークスがそこまで注目を集めているかを完全には説明していない。正直なところ、私が受講した授業が、自分の履修した授業にのみ関して言えば、悪くはないが取り立てて素晴らしいとも思わなかった。履修学生同士のコミュニケーションならば、今までも数多くのオンライン大学が長年に渡って行ってきたことである。ただ、ウェブサイトの使い勝手が良かったというのと、他学生とのコミュニケーションが簡単に取れるというのは確かに興味深かった。しかし、受講者としての観点から判断すると、今までに存在しているオンラインの授業と、正直なところあまり違いはないと思う。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">それではなぜ、ムークスが高等教育だけにとどまらず社会的な注目を集めているのか？それはムークスが現時点で行っていることそのものよりも、その今後秘めた可能性に注目している、といったほうが正しいといえる。実際のところ、ムークスはその多くがビジネスモデルが確立しているわけでもなく、現時点では一部の投資家から供給された資金によってほぼ運営されている。<a href="http://www.educause.edu">Educause</a>がムークスにおいて今後注目すべき点として、ビジネスモデルの展開をその一つの理由に上げ、いくつか考えられるビジネスモデルの例をリストアップしていたが、まだまだ試運転段階であり、将来どのような形で収益を上げていくのかはまだはっきりとしていない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ただ、現在一つの興味深いビジネスモデルとして実行されているのが、人材紹介システムである。ムーク企業が、人材紹介の役割を果たし、企業に優秀な人材を紹介して、その紹介料を受け取ることによって収益を上げるというモデルである。そのロジックは実にわかりやすい。彼らの考え方はこうである。例えばある授業に世界中から１０万人の授業を受けたとしよう。おそらくその多くは、興味本位で授業を履修しているだけの学生であろう。多くの学生は多分宿題も提出しないし、そもそも毎週の授業に参加しているかどうかも怪しいものである。しかし、その一方で１０万人くらいのうち、おそらく１００人くらい、割合に直せば、０．１％くらいは素晴らしく優秀な生徒であるということも十分統計的に考えられる。実際に授業に課される宿題は、（私の履修した授業では）実用的であり、この宿題を解くことが出来る人はおそらく仕事で有用なスキルをもっているであろうと予想される。このトップレベルにいる学生を見定め、企業に紹介し、その紹介料で収入を稼ぐというのが今ひとつのビジネスモデルになっている。実際、企業でも従業員にムークの単位を取れば昇給などのメリットと関連付けるなどの動きも起こっており、それがまたムークスの学生数の増加の一つの理由になっている。しかし、ムークス側からすれば、これだけでは満足できる収入になるわけでもなく、実際のところもっと集金力のあるビジネスモデルを模索しているのが現段階といえる。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">そんな先行きの不透明なムークスであるのにも関わらず、なお注目を集める理由は何であろうか？それはなんといってもその保持する圧倒的なデータ量である。例えば、数ヶ月前にはCourseraが学生総数２００万人を突破したということが発表された。そしてCourseraは、ただ２００万人の学生の基本的な属性のデータを集めているだけではない。学生が受講しているコースのページにアクセスした後のありとあらゆる情報、何時にログインし、どのサイトをどれくらい閲覧し、コミュニティにどのように参加したのか、等のデータをリアルタイムで集積した、いわゆる「ビッグデータ」を保持し、分析活用している。これがムークの根幹であり、投資家を引き寄せる一番の理由である。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">「ビッグデータ」とは、アメリカ高等教育界においても近年様々な場所で聞かれるようになった言葉であるが、簡単に言えば、リアルタイムで集積されていく巨大なデータベースのことである。ビッグデータはそのあまりの巨大さのため、何百、何千とのサーバーを必要とする。例えば、グーグルは検索する人の傾向に関するデータをリアルタイムで集積していき、フェイスブックはユーザーの更新情報、及び書き込みに関することや、誰がどのような広告をクリックしたかなどありとあらゆるユーザーの行動に関するデータをリアルタイムで集積していく、それが一般的にいわれるビッグデータである。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ビッグデータは、そのデータの量に物を言わせ、今まで思いもしなかった発見を導く可能性がある。グーグルの例を使えば、例えば１００万人分のデータのうち、１万人のユーザーが朝７時にグーグルで何かを検索した後経済関連の本の広告をクリックした（実際どうかは知らないが）という関連性を発見したとする。これは１００万人規模のデータだからこそ浮かび上がる傾向であり、ビッグデータだからこそわかりうる発見である。近年データの重要性がますます高まっていくに連れて、ビッグデータの価値の注目度が急上昇してきているのが近年の流れである。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">このビッグデータの波が大学業界にもいよいよ波及してきたということにこのムークスの持つ重要な意義があり、Courseraおよび他のムーク ス企業が社会的な注目を集めている理由がある。何百万人ものリアルタイム・データを集めることによってもたらされる効果は、今まではわからなかった新たな教育方法を生み出す可能性がある。現在のアメリカの大学機関で、学生のデータをこのレベルで集めている大学はほとんどない。また、そのビッグデータを保持するだけのキャパシティもないところがほとんどである。現時点で通常の大学が保持している学習に関するデータは、学生の大学・高校時代の成績、教員の給与、たまに学生生活アンケートのデータくらいであって、年に数回更新される程度のデータである。それでもないよりはマシだが、やはりそのデータから分かることは、特に学習状況に関しては、ほんのわずかでしかない。その点、ムーク系企業が集めるデータは学習状況に関して、情報量が圧倒的に異なるだけでなく、伝統的に分析に使われてきたデータとは全く質が異なるデータである。そこから明らかになることは、これまでの教育の常識を覆すような発見もあるかもしれないし、そこからまたいくつものビジネスチャンスが生まれてくるに違いない、そのような期待がムーク系企業を取り巻く人達にはある。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">実際に、ビッグデータを利用して、収益を上げる教育ビジネスモデルを打ち出した企業も既に出てきている。最近脚光を浴びているのは、ニューヨークに本拠地を置く「Knewton」（ニュートン）というムーク系企業である。ニュートンは最近アリゾナ州立大学と巨額の契約を結び大学業界内で一躍その名を知られる存在となった。ニュートンは、アメリカテスト会社大手のピアソンと協力し、独自のオンラインコースソフトウェアを提供している。そのソフトウェアの詳しい内容はここでは省くが、簡単にいえば、教員にひとりひとりの学生がどこを理解し、どこでつまずいているかをリアルタイムで通知するシステムである。例えば数学の授業である学生が微分のある公式がわかっていない、そういったことがリアルタイムで理解をすることができる。また学生にもこのソフトウェアはメリットが有る。例の微分の公式が理解できていない学生に、このソフトウェアは、なぜ公式が理解できないか、そのいくつかの理由を提供し、その公式を理解する上での基礎知識をその学生が身につけているかどうかを確認させる。そして学生が理解していない基礎知識があれば、いったん学生は微分の公式を学ぶことをひとまずやめ、その前の段階のモジュールに導かれる、といったようなシステムである。この学生一人ひとりの理解度に合わせて学習内容を変えていくことを英語でAdaptive Learningというが、これらの意思決定の根拠となるのは、ピアソンの過去に集積されたデータに基づいたカリキュラムである。ニュートンはそれに現在の履修学生のデータをリアルタイムでどんどん集積させ、このピアソンのカリキュラムをクライアントの大学のために随時改善していくというシステムを構築した。現時点では履修学生一人当たり１００ドルをアリゾナ州立大学は支払う契約内容になっているということだが、この価格は多くの大学にとっては、まだまだハードルが高いといえる。とはいえ、授業改善はアメリカ高等教育の重要テーマの一つである。ゆえに、このモデルが今後どこまで他の大学へと広まっていくか目が離せない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">ところで、このビッグデータ、利点ばかりを強調してきたが、そればかりでもない。逆説的になるが、データがあまりにも膨大すぎて分析をしようにもどこからどうやって手を付ければいいかがわからない、という課題もある。教育研究者ならだれでも思い当たる節があると思うが、データが大量にあったとしても分析に使えるデータは実は意外と少なかったりするものである。フェイスブックがあそこまで大量のデータを集積しているのにもかかわらずそのデータを広告収入増に使い切れていないということと同じ問題といえなくもない。しかし、このような研究者の常識はこれらの企業には関係ないといってよい。彼らは大量のプログラマーをグーグルやその他有力企業から引き抜き、彼らに巨大なデータベースを日々データマイニングさせて分析作業を行い、新たな情報を生み出す努力を行なっている。この数に物を言わせた半ば強引とも言える分析アプローチがどのような結果を生み出していくのか非常に興味深いところである。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">まだまだムークスは初期段階であり、今後の展開方法はまだ明らかにはなっていないが、大学関係者はインターネット上で無料でエリート大学の授業が履修できるという表面的な部分だけ見ていると、もっと根底にある大きな流れを見失うことになりかねない。一番の重要なポイントはビッグデータであり、それが大学業界にとうとう参入してきたという事実である。ビッグデータが今後どのように大学業界で展開していくのかは現時点では予測が難しいが、ますますその重要性は高まっていくことだけは間違いないといえる。（次回に続く）</span></p>
<p><span style="font-size: small;"><strong>参考記事</strong></span></p>
<p><span style="font-size: small;">Inside Higher Ed. “How will MOOCs Make Money?” 2012-06-11.<br />
<a href="http://www.insidehighered.com/news/2012/06/11/experts-speculate-possible-business-models-mooc-providers">http://www.insidehighered.com/news/2012/06/11/experts-speculate-possible-business-models-mooc-providers</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">Inside Higher Ed. “MOOCs Assesed, Modestly.” 2013-01-14.<br />
<a href="http://www.insidehighered.com/news/2013/01/14/assessing-moocs-higheredtech-conference">http://www.insidehighered.com/news/2013/01/14/assessing-moocs-higheredtech-conference</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">Inside Higher Ed. “The New Intelligence.” 2013-01-25.<br />
<a href="http://www.insidehighered.com/news/2013/01/25/arizona-st-and-knewtons-grand-experiment-adaptive-learning">http://www.insidehighered.com/news/2013/01/25/arizona-st-and-knewtons-grand-experiment-adaptive-learning</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">Inside Higher Ed. “The Ethics of MOOCs” 2013-03-25<br />
<a href="http://www.insidehighered.com/blogs/sounding-board/ethics-moocs">http://www.insidehighered.com/blogs/sounding-board/ethics-moocs</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">Educause. “What Campus Leaders Need to Know About MOOCs”<br />
<a href="http://net.educause.edu/ir/library/pdf/PUB4005.pdf">http://net.educause.edu/ir/library/pdf/PUB4005.pdf</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">TechCrunch. “Coursera Takes a Big Step Toward Monetization, Now Lets Students Earn Verified Certificates for a Fee.”  2013-01-08. <a href="http://techcrunch.com/2013/01/08/coursera-takes-a-big-step-toward-monetization-now-lets-students-earn-verified-certificates-for-a-fee/">http://techcrunch.com/2013/01/08/coursera-takes-a-big-step-toward-monetization-now-lets-students-earn-verified-certificates-for-a-fee/</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">Economist. “Learning New Lessons” 2012-12-22. <a href="http://www.economist.com/news/international/21568738-online-courses-are-transforming-higher-education-creating-new-opportunities-best">http://www.economist.com/news/international/21568738-online-courses-are-transforming-higher-education-creating-new-opportunities-best</a></span></p>
<p><span style="font-size: small;">日本経済新聞　「誰でも無料　東大、オンライン講座を９月開講」２０１３年２月２３日<a href="http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2203E_S3A220C1000000/">http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2203E_S3A220C1000000/</a></span></p>
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